流川寝すぎ。





どうしてだろう。




 意味が分からない。

 なんだこの状況は。


「……すー……ぷー……」





 な ん で 流 川 の 顔 が 至 近 距 離 に !?





 流川といえばアレだ。1年で知らぬものなしといっても過言ではない超美形スーパーバスケットマンだ。顔良し、背高し、運動神経良し、成績悪し。いい男の条件を性格と学力以外満たしているもて王。(財力までは知らん)
 その流川楓がなぜわたしを抱えながら眠っているのか。いつのまにかノートじゃなくて腕枕だしね!
 あわわわわっ流川親衛隊に見つかったら豪いことになりそう……!!
「……ん?」
 ふと気が付くと、異様にデカイ学ランがわたしを包んでいた。誰のだろうとか考える必要はなかったが、なんでだろうとは思った。
 ――ところで、わたしはこの短い間に何回『何故』OR『なんで』と考えたろう。
 いや、そんなことはどうでもいい! とりあえずこの腕の中から脱出を!!

 ググググググググ……。








 ムリ★








 あきらめ早いとでもなんとでも言うがいい。
 だって腕の太さとか倍ぐらいありそうだよ!? 無理やり出ようとするとなんか力強くなってきたし!圧死するぐらい抱きしめられる前に諦めようと思うのは懸命な判断ですよ!
 こうなったら起こすという手だが……あんまり使いたくないなぁ。
 11組の友達から聞いた話だが、流川を無理やり起こそうとした先生が半殺しにあったって……。まあ、半殺しは確実に嘘だろうけど、暴れたことはゴチャゴチャになった教室から窺えた。

 ……やっぱり起こすの怖いなぁ……。
 
 起こすという選択しを諦めて流川の顔を見た。
 びっくりするほど長い睫毛、うらやむほど白い肌、憎らしいほど筋の通った鼻、恐ろしいほどサラサラの黒髪。
 特別ファンではないが、素直に綺麗だと認めれた。
 ――この肌、すべすべなんだろうな……。しかもきっとお手入れナシで。
 羨ましいなぁ、と心の底からの羨望をこめたまなざしを向けていると、背中に回っていた流川の手と綺麗な眉間に力がはいり寝言を一発。







「……ぱしゅ、く……れ……」









ぶぅ―――――――――ッッ!!!





 腹立つぐらい形の整った口から放たれた果てしなくマヌケな寝言に、わたしは笑いを堪えれなかった。
 つーか、今の寝言聞いて堪えれたら神か変人だろう。
(パス! 『ぱしゅ』って『パス』か!! 寝てるから呂律まわってねぇっっ!!)
 笑い声を上げるのを懸命に堪えながら、わたしは肩を震わせた。
 録音しとけばよかったとか、夢の中でもバスケ一色かとか色々考えたらもっとおかしくて笑いがどんどんこみ上げてくる。
 止めることが不可能だと諦めかけたわたしの笑いを止めたのは、流川の動き出したまぶただ。



 思わず、硬直した。



(や、だってこれ、起こしたことになるんじゃないの……?)
 わたしが石のように固まっていると、流川はのんびりと2,3回シパシパと瞬きし、起ききっていないような顔で
「……今…何時間目?」
 と聞いてきた。
 正直わたしもちょっと前に起きたばっかりで時間なんぞ確認してなかったから分からない。もぞもぞと動いて腕時計を見ると丁度4時間目が終わりお昼休みに入る頃だった。
「そろそろお昼休みになるぐらい、かな」
「……ふーん……」
「って、ヲイ。わたしを解放してから眠りに入ってくれ」
「……ん」
 パ、と流川の束縛がゆるくなる。
「ありがと」
 お礼を言って体を起こす。同時に流川の学ランが落ちて、その存在を思い出した。
 よくここで眠っているからだろうか、流川の学ランは一年のそれとは思えないほど色あせていた。3年の前半でももう少し綺麗な人はいそうである。
 ところで、これがわたしにかかっていたということは、流川がかけてくれたということだろうか?
「ねぇ、流川?」
「……」
 返答はなかったが、なんとなく聞いているような気がしたので、学ランを横になっている流川にかけながら言葉を続けた。
「かけてくれたの?」
「……ん」
 短い返答だったが、それで十分だった。
 昼寝に来た流川は先に眠っていたわたしを見つけ、おそらく寒そうにしていたのだろうわたしに学ランを貸してくれたのだ。そして脱いだはいいが自分も寒くなりわたしで暖を取っていた、というところだろう。

 しかし、これではわたしの中の流川のイメージと違いすぎる。

「……なんで?」
 ピクッ
「なんでわたしに貸してくれたの? 流川も寒かったんでしょ?」
 ピク、ともう一度眉を動かして鬱陶しそうに目を開けた。
 ああ、本気で寝たいらしい。ごめん、もうちょっとだけ付き合って。
「……が……」
「?」
「寒そうに丸まってた……から。触ったら、手ぇ……放さなねぇ、し……起きねぇし……。風邪…………zzzz……」


 驚いた。

 わたしの名前を知っていたってこともだけど。

 真っ赤な他人であるわたしが風邪を引くかもしれないって事を気にしてくれたことに。

 冷たいヤツだ、って聞いてたけど、全然違うじゃん。

 さっきまで顔と名前しか知らなかったのに。

 どうしてだろう。

 こんなにあったかい気持ちに、なれるなんて。


「……起きたらあったかい飲み物でもおごってやろう」







名前変換少なすぎ!!!!!!!
失敗した。ずっと寝かせてたからなぁ……。
シチュエーションは上手く考えましょう、自分。

(06,10,22)