7月の雨になったのは内緒
六月の雨
降水確率10% 本日は真夏日となるでしょう。
「って、何処がだよ」
誰もいない昇降口にわたしのつぶやきが響いた。
他に聞こえるのは地面に叩きつけられる雨の音。なんだよこのバケツひっくり返したみたいな土砂降り。
……畜生。二度とあの番組の天気予報信じない。
そりゃ、朝は曇ってたけど、でも降らないっていうから……。折りたたみはこの間壊れてから買ってなかったし。ああ、最悪…。
真っ黒で重そうな雨雲は時々光と轟音を放ちながら動く気配もなく同じ場所に留まっている。――ように見える。
「……はぁぁぁぁ……。せめてもうちょっと早く帰れてたら誰かいたかもしれないのに」
変な仕事回されたせいでそのままずるずると……。みんなさっさと帰りすぎだろ!?
20分経過。
……雨、止まないね。(byト●ロ
さっきより雨脚は弱まってきた感じだけど…。でも今日借りた本があるからそれが濡れるのは面白くない。この雨の中帰って濡れないことがあろうか? いや、無い。
座り込んで無意味に反語を使ってても雨は止まない。本は置いて、自分は濡れて帰るかなぁ。
グサッ
「ギャッ!?」
突然背中に刺されたような痛みが走った。鋭利なものではなく、ただ先が細くて硬い何かだ。
色気の無い声が出たことなんて気にせず痛みで涙目になりながら振り返り、天井を仰がんばかりの勢いで犯人を見上げた。
「三井くん! いきなり何すんの!? 多分思ってるよりずっと痛いよ!!」
「邪魔なもんが目の前にあるからどかそうと思ってな。で、は何やってんだ?」
悪びれた様子もなく、三井くんはシレっと言い放つ。(邪魔って…)
そこでハッと三井くんの手にあるブツに気がついた。
「三井君!!」
「っな、なんだよ?」
「一緒に帰ろぉぉぉ!!」
恐らく私の背中を刺したであろうその武器に、私はすがることにした。
「私は今、バスケが室内競技であることに大変感謝しております」
私がしみじみそういうと、三井くんは呆れたように笑いながら突っ込んだ。
「なんだそりゃ」
「だってそのおかげで傘の恩恵に与ることができるんだよー。あ、もうちょっとそっちでいいよ」
身長差から、当然のように三井くんが差す傘をちょっと押すと、まるですごい勢いで跳ね返って返ってきたかのようにますます私の方へ傾いた。おかげで私の体は完全に雨から遮られたが、変わりに三井くんの肩がびしょ濡れだ。
「三井くん! いいって。体ぬらしちゃダメだよ! 私はカバンが濡れなければいいから」
「…………」
「聞いてる? 大事な時期なんだから風邪引いたらまずいって! ほらっ!!」
無理やり傘を三井くんの方へ傾ける。が、両手でやったにも関わらず、片手で軽く元に戻された。わ、わたしそんなに非力だったかなぁ……。
「……あのなぁ、」
「ん? なに?」
「それ」
三井くんがちょっと目をそらしながら、わたしを指差す。
ツツツ、と三井くんの指先を追いながら自分の体を見てみる。
「!? うわ、ちょっと透けてる!」
最初から私の方に傘を傾けていてくれたけど、やっぱり二人じゃ狭い上に雨の勢いもそれなりだったせいで防ぎきれなかった雨が私の制服を透かしていた。
もっとも、肩と腕の部分でそう気にするほどではない。
「あららぁ」
「もうちょっと濡れたらヤバイだろ? 俺のことはいいから大人しく入ってろって」
「うーん、もうちょっとなら平気だけどなぁ」
「……。お前もうちょっと気使えよ…」
三井くんが呆れたようにそういう。だが、正直同じ言葉をそのまま返したい。なので返そうと思う。
「三井くんもさぁ、気を使ったほうがいいかもよ?」
「あ? 俺?」
「うん。濡れて透けてる制服でセクシーなのは、女の子だけの特権じゃないよ?」
は?と呆気に取られる三井くんに、わたしは『ニィ』笑いながら女の子の(?)心理を語ってあげた。わたしだけかもしれないけど、そんなに外れてはいないと思うし!
「三井くんみたいな逞しさって、女の子には結構たまんないんだよ? 女には絶対にない筋肉とかね。それが『透けて』見えるんだから。多分、男の子が女の子を見て感じるのとそんなに違わないことを思っちゃうよ」
おまけに三井くんって髪切ってからすごい人気だしね。
カッコイイ男がそんな状態になってて興奮しない女はいないよ。多分。
「……お前は?」
「え? わたし?」
「おう。も欲情するわけ?」
……よッ!?
「ず、随分とストレートにおっしゃいますね?」
いや、まあ、簡単に言うと、そういうことに、なるんだろう、けどさ…。もうちょっと包んでくれても。
「そういったじゃねぇか。俺がの透けた肩見て欲情するように、お前も俺の体みて興奮するって」
「言葉を包めよ! 少しは!!」
雨で人通りが少ないとはいえ何を言ってるんだ……って……?
「……あれ?」
三井くんが、私を見て?
……。
…………。
「よかった。わたし一応そういう風にみえるのか!」
「いや、そこはそういう反応じゃねぇだろ」
冷静な三井くんの突っ込みが上から降ってくる。
三井くんを見上げると、ちょっと複雑な顔をしながら私を見下ろしていた。
「……」
「……ちょっと確認、いいかな?」
「ああ」
「今の、告白?」
ちょっと首をかしげながら聞くと、複雑な表情に笑みを浮かべ、頷いた。
「……の、つもりだ」
「有りなの?」
「それは次第だろ」
あとあがき
こんな終わり!?(久々の100題更新にも関わらず!
しかも6月まにあってねぇぇぇぇぇ!!!
('07/7/16)