友達以上、恋人未満?

隣。

「似合わないよ、その頭」
 わたしがそういうと、幼馴染の男は『うるせぇ!!』と怒鳴り散らして行ってしまった。


 会わなくなったのは、いつからだったろう?
 幼馴染の男、三井寿とは物心つくころから一緒にいた。年齢も一緒で、家が隣だったから気づいたときにはいつも傍にいた。
 小学校低学年までは毎日のように遅くまで互いの家で遊んで、そのままお泊りなんていうことも日常だった。
 高学年になると、さすがにお互いに同姓の友達と遊んだりもしたが、登下校は一緒だったし、遊ぶ友達がいなければ二人でバスケをしていた。
 中学に入り、さすがに小学生のときのようにべったりしなくなったが、それでも仲はよかった。テスト前になるとお泊り勉強会なんてものも開いていたし。男女として意識したことがなかったから、できたことだろうなぁ。
 高校は、なぜか同じところに進学した。てっきり推薦でもっとバスケ部の強いところに進むのだと思っていたから驚きだ。変な話だけど、どこに進学するのかとかまったく話していなかったんだよね。
 しばらくして、ひざを壊して入院した、と母から聞かされた。
 で。
「……なんだこれ」
 お見舞いに行ったのに、ベッドの中にはカモフラージュ用であろう、シーツがあるだけだった。大方、病院を抜け出してバスケの練習でもしているのだろう。じっとしていられない男だから無理もないけど。
 しかたがないので、持ってきたプリンと受け狙いで買ってきたアンチョビの缶詰だけおいて退散してきた。 

ー。寿くんから電話よー」
 夜、律儀に電話がかかってきた。…とってもらしくない。
「お客様のおかけになった電話は、現在」
『使われてるだろ、バカかお前。ところで、見舞いに来てくれたんだよな? 悪かったな、いなくて』
「いや、どちらかというと大人しく寝ているほうがおかしいというか。それにしてもよく分ったね。書置きもなにもしてなかったのに」
、悪いけど俺の知り合いで見舞いの品にアンチョビを買ってくる頭のおかしいヤツはお前しかいねーんだよ』
 心底あきれ返ったような声。
 それにしても、頭のおかしいってひどくないか?
「申し訳ないが、受け狙いなんだけど」
『マジでこれ買ってきてるようなら、今すぐ縁を切りたいな』
 よかった、受け狙いで! ていうか、そんな塩分の高いものをマジでお見舞いに持ってくる人いないよ、多分!
「で、笑ってくれた?」
『ビビったつーの。冷蔵庫開けたら入れた覚えのないアンチョビがはいってんだぜ? 何事かと思った。まあ、すぐの顔が浮かんだけどな』
「それは光栄。……ところでさ、ちゃんと先生や看護師さんの言うこと聞かなきゃだめだよ? 治らなくてあとで泣きを見てもしらないからね」
『大丈夫だって! すぐに復帰してまた俺のプレーを見せてやるからな!!』
「楽しみにしてるよ」
 それから、2,3言葉を交わして、電話を切った。
 この会話が、まともに話す最後の言葉だと知らずに。


 無理に練習をしたせいで膝の怪我が再発して、よくわからないけどヤツは腹いせにグレて、会話はもちろん、会うことすらなくなった。
 同じ学校で家が隣なのにまったく姿をみなかったのは、私が避けられていたからだろう。無理に追いかけて会うことだって出来たけど、会いたくないのなら会う必要はないと思ったから止めた。
 それから一年半ぐらいしてからだろうか。コンビニに行こうとしたわたしと、帰ってきたところのあいつと、玄関先でばったり会った。
 正直、一瞬誰なのか分らなかった。誰なのか分った瞬間
「似合わないよ、その頭」
 と、口から言葉が勝手に飛び出ていた。
 わたしのこの言葉をきいて、もともと目つき悪い目をさらに吊り上げて
「うるせぇ!!」
 と怒鳴って家に入っていってしまった。
「……うるさいのはどっちなんだか」
 コンビニに行く気も失せたので、わたしも家に入って寝ることにした。


 時は流れてわたしたちは最終学年へ進級し、進学やら就職やら考えなくてはならない時期へ突入した。わたしはというと、成績も特別良い訳ではないが悪くないので、なんとなく進学の道を選んでいた。
 この日も大学の資料やその他もろもろ調べていてちょっと帰りが遅くなってしまった。最近はいつものことなので、親もなにもいわなくなるぐらい。
 真っ暗な部屋に電気をつけずに、まっさきに窓を開ける。

 ガラッ――。

「……」

「……」


 窓を開けたら、目の前にすっごく異様に驚いた顔があった。

 
 相手もちょうど窓を開けたとこだったらしく、不意をつかれて固まっていた。
 …わたしのほうは、その傷はどうしたとか、誰に殴られたとか、なにやってんだとか、色々聞きたいことがあったような気もしたが、全部言うのを止めた。
 ただ一言、いまだに固まっているヤツの頭に手を置いて、ワシャワシャなでて笑った。


「似合うじゃん、この頭」


 わたしが言うと、やつもわたしの頭をワシャワシャなでて


「うるせぇ」


 と、前歯のない口を見せて照れ笑いをした。

 ……思わず思いっきり噴き出して、殴られた。



うっわ、ついにやっちゃいましたよ。夢小説。
処女作にして三井。短い、そして誰だお前。
名前変換が少ない上、タイトルと内容が関係ないけど気にしない方向で。<気にしろ
ただ、こんな関係もいいかな、と。あんまり幼馴染設定好きじゃないんですけど。
あ、ちなみに事件直後で髪を切っただけでまだ前歯まで入れていないっていう設定ですので。(分り辛っ
('05/8/20)