バーカって言わせたかった。
「ー」
「なんじゃーい」
「カラオケ行くぞ」
デュエット
「……は?」
片思いしているクラスメイトの言葉に、わたしは思わず顔を思いっきりしかめて聞き返した。
返された想い人の三井寿は、さも当然のごとくもう一度同じことを繰り返した。
「だから、カラオケ行くぞ」
「なんで。」
「今日はテストで午前中で終わりだろ。部活もないし、平日は安いからな」
「いや、明日もテストなんだから勉強しなよ。それでなくても三井とカラオケなんて絶対ヤだよ」
わたしがそういうと、ムッとした人相の悪い顔――なんでこんなヤツが好きなんだろ…――で理由を聞いてきた。さっきと逆だ。
「なんでだよ。」
「あ、誤解されないように言っておくけど、別に三井と出掛けるのはかまわないんだよ? ゲーセンだろうと遊園地だろうと付き合ってあげてもいいけど」
「俺が誘ってやってんだろうが!」
「…誘われてあげてもいいけど、カラオケだけは絶対イヤ」
わざわざ別の言い方に直してもう一度強調してやる。
三井は面白くなさそうに目を細めてからもう一度問いただしてきた。
「なんで俺とカラオケはイヤなんだよ。お前カラオケ行くの好きじゃねーか」
「まーねー。カラオケは好きだよ。特定の子といくのは」
「なんで特定されるんだ」
「わたしの音痴さをもともと知っているのならばかまわないのさっ」
そう、わたしは音痴。誰が好きで片思い中の相手に格好悪いところを見せたいと思うんだ。
だけど三井はなんともなさそうな顔をしてわたしの腕を引っ張った。
「うっわ!?」
「なんだ。別に下手でもかまわねぇって。さ、行くぞー」
「ちょ! イヤだって!! わたしはかまうの!」
「一緒に行く俺がかまわないって言ってんだからいいんだよ」
「イーヤーだーッ!! 三井に音が外れてるの聞かれるのイヤーッ!!」
「そしたら笑ってやるから」
「笑うなっ!!」
ツッコミしながら拒否してみたが、三井の腕を振り切れるわけもなく、っていうか半分以上喜びながら(恋する乙女の悲しい性よねー)結局カラオケに連れて行かれた。
そして三井の野郎、これが馬鹿みたいにうまい…。
「うっし、96点! まあこんなもんだな」
「えぇっ!? わたしそんな点数出たことないよっ!!」
「80までいきゃ人並みだろ」
「……」
いったことあったかな…。いや、一曲二曲ぐらい90点いく曲もあるけど…。マイナーすぎてこの機種じゃ入ってないし!
「ほれ、マイク」
「わ!? 投げたら危ないっていうか、わたし曲入れてないけど?」
「俺が入れてやった」
「!!?」
うぉい!! 来ても歌わなきゃいいやと思ってたのに!
「知ってるだろ、この曲」
「し、知ってるけど…。本当にわたしが歌うのか!?」
「当たり前だろうが」
ヒゲブーッ!(意味なし。ギャグ漫画日和参考
畜生、こうなったら音痴の癖にノリノリのでかい声で歌ってやる!! もうヤケじゃーっ!!
「……コレでもかってぐらい音外した……」
「いや、でも言うほど下手じゃなかったぞ。意外と上手いじゃん、」
「そ、そう?」
「俺ほどじゃないけどな」
「ソーデスネ」
せっかくときめいたのに、台無しだ。…悲しいかなそんなところもかわいいと思ってしまうんだけどねっ!!
「よし、次、この曲な」
「え? 次は三井じゃないの?」
「このあと6曲ぐらい連続で」
馬鹿かお前は・・・・!!
「なんでわたしがそんなに歌わないといけないんだよ! しかも6曲連続てアホか―!! 喉痛めるっちゅーねーん!!」
「あ、曲始まるぞ」
「無視かよ!」
何だよこの状況! そしてエントリーされてるのが全部わたしの十八番って…なんだか怖いぞ三井!! 誰情報だよ!?
「お前とよく行くカラオケメンバーから」
個人情報保護法はどうした……!!
結局何度か連続で歌わされ、ようやくあと10分となりました。解放されるー。こんなに疲れるカラオケは初めてだ。しかも疲れてるのはツッコミ疲れだしね…。
「んじゃ、次で最後だな。ほれっ」
「シメわたしっ!? って、あれ? 三井もマイク?」
「バーカ。デュエット曲だよ。しっかりついてこいよ」
うぇぇ!?
「むっ無理っ! 三井が上手すぎてわたしなんか!」
「大丈夫だって」
何を根拠にーっ!
って言ってるうちに曲始まっちゃったし!!
やっぱり三井の歌は上手くて、声もすごいかっこよくて。ビジュアルはもちろんかっこいいけど、わたしは三井の声が好きだと再確認した。
んでも途中からわたしの声が入るのはなんだかおかしいような気がして…。
「お前、なんでこっちの低い音に合わせるんだよ」
「しょ、しょうがないじゃん! つられちゃうんだよう!! それについて来いって言ったじゃん!」
「音までついてくるなよ! …ま、いい。ほら、帰るぞ」
「あーっ待って〜」
慌てて出してた携帯やらハンカチやらをしまって立ち上がる。
三井がドアを開けたまま待っててくれたので、小さくお礼を言いながら部屋をでようとした。
バンッ!
「はぎゃっ!!?」
「ブッ! ハハハハハッ!! かっこわりぃっ! ぶつかってやんの」
「み、三井が閉めたんでしょー!? いったぁい!! いきなりなにすんのぉっ!!?」
なんだよコイツ、意味わからん!!
おでこメチャメチャ痛いし。でも鼻じゃなくて良かったー…。って、そういう問題じゃないよ!
「もー! 三井って好きな子をいじめるタイプでしょ!」
と、フロントについてからふざけて言ってみた。……ふざけていうのでもドキドキだなこりゃ。
んできっとわたしの動悸なんか知らないで『馬鹿いってんじゃねぇよ』とか返ってくるん……
「今頃気づいたのかよ」
「……へぅ?」
反応が、遅れた。
三井がさっさとお金を払ってるのとか、ぜんぜん見えてなくて。
ヤツは、今なんていった? 予想通りの答えでなかったのはたしかだけど、なんて…?
「なにボーっとしてんだ。帰るぞ」
「えぇぁっ!? ま、待って」
正気に戻って急いで三井の背中を追いかけた。だけど、隣に並ぶなんてことできなくて、斜め後ろで歩調を合わせた。
「み、三井…」
「なんだよ」
「お金、半分」
言いたいことが違う上になんで片言なんだー…。
三井はまったくこちらを見ずに受け答えをする。
「今回は特別におごってやる。無理やり誘ったしな」
「あ、じゃあお言葉に甘えまして」
――じゃないってばよ!!(ナ●ト)
切り出せ、本題! 確認せねばならぬだろうが!
「……んでさ、三井」
「なんだよ」
「えと、さっきのは冗談ですか? わたしが慌ててるのみて面白がってるだけですか?」
とりあえず、この線が一番濃いけど…。
『冗談に決まってるだろバーカ。本気にしてんじゃねぇよ』もしくは『お前なんかを女として好きになる男がいたらみてみたいっつーの』って言って来い!
……いや、言われたらかなり傷つくな……。言うな三井。や、でも言ってくれ三井! とりあえずなんか反応よこせ三井!!
「……はぁ」
これ見よがしに三井が盛大にため息をついた。またも予想外の反応だ。
そしてクルリと振り返ってこちらを見た。
「本気だっつーの、バァカ!!」
そういってまたこちらに背を向けて歩き出した。
さっき振り返った顔は、今まで見たことがないぐらい、真っ赤だった……。
やっぱりどうにも変換が少ないし、タイトル関係ないし。
そしてコレは甘いのか? 終わりが中途半端であることは間違いないが。
多分この後真っ赤になりながら手をつないで帰ったのでしょう。きっと。<書けよ
その辺はまあご想像にお任せする方向で!
('05/10/14)