お題@



初夏の出来事




「寒い」

「はぁ? 十分暑いだろうが」

「『はぁ?』はこっちのセリフ。激烈寒いっつーの」

 いや、激烈は言いすぎか。
 でもこの季節にしたら寒いのは確かだ。去年の今頃はすでに『暑い暑い』と連呼していた記憶がある。今年は冷夏にでもなるのだろうか。そういっていた年がかなり暑かったような気がしたけど。
 で、わたしの寒いという独り言に見事に反応してくれた隣の席の三井寿くん。(ああ、「くん」とか思っていたよりキショい。二度と使わないでおこう。)
 わたしの席は窓際から数えて2列目の一番後ろの席。世間一般的に最良と呼ばれる窓際の一番後ろは三井が占領していた。
 で、わたしが何を言いたいのかというと、だ。



隣のでかい図体のせいで日差しが遮断されているという事実。
(ええ、どんなカーテンよりも性能がよろしいことで。)



 そして暑いらしいその男は窓を全開にする。ぶちぶち文句をいっても閉じてくれる気配はまったくない。

「ねぇ、寒いって」

「俺は暑い」

 そんな会話は朝から幾度と知れず行われている。
 っていうか、わたしの寒いという言葉が聞こえているならばちょっと気を使ってくれてもいいと思う。

「三井〜。次の授業中だけでも! ね?」

、俺は朝から練習で汗かいたりすんの。そんながんばってる俺のためにちょっとぐらい我慢しろって」

「ちょっと!? 窓全開をちょっととほざくか、この男!!」

「って、うわ! テメェ!! 消しゴムのカス投げんな! どれだけ地味な攻撃だよ!!」

「どこまでも地味な攻撃さ!」

「開き直りやがった!?」

 こんなやりとりをしながらも、わたしは三井に消しゴムのカスをぶつけ続ける。
 痛くも痒くもない攻撃だが、精神的には妙にすっきりするというか、楽しい。相手には攻撃と同じように地味に地味に精神的ダメージがあるしね。
 気が付くと、三井の制服がカスにまみれてところどころ白くなっていた。
 ・・・・・・そんなに溜めてあったのか、わたし。

「イヤ〜。三井汚い」

・・・・・・。一体誰のせいだと思ってやがる?」

「自業自得? か弱い乙女のお願いを全然聞いてくれない三井が悪い」

「か弱い乙女は人にケシカス投げたりしねぇ!」


 さて、時間はすぎて昼休み。
 朝よりは暖かくなってきたけど、それでもまだ少し肌寒くて。
 わたしは昼練で三井がいないのをいいことに、気持ちよくひなたぼっこをしながら机に突っ伏していた。窓は閉めきってあるし、なかなか心地よい。はっきりいって、眠気が襲ってくるのは自然現象だと思・・・・・・

ペタ

「うっひゃぁ!? 冷たっ!!?」

『うっひゃぁ』はないだろ」

「み、三井!? 貴様今、わたしに何をした!?」

 頬に与えられた異様に冷たい感触に驚いたわたしに、逆に驚く三井。
 三井は席に戻りつつ窓を前回にしながらわたしの机に冷たいものの正体を置いた。

「アイス!? アイスこそないだろ! ・・・・・・ていうか、どうしたの、これ?」

「バスケ部の連中でじゃんけんして負けたやつがアイスを買ってくるって話になってな。一個あまったからやる」

「負けたのか、三井。なんていうか、アイスは好きだけど今は迷惑以外の何ものでもないのですが」

「なんでだよ」










お前わたしが散々寒がってるの見てるか!?










「寒いって何度も申しておりますが?」

の敬語の方が寒い」

 三井は言いながら、わたしが突っ返したアイスを返される前の位置に戻した。
 もう一度返そうとしたら、頭からなにやらかぶせられた。

「わ!? なにっ?」

 驚いて何かを確認すると、それは三井の学ランだった。
 肩にかかったわたしには大きすぎるそれは、今まで着ていた人の体温を残していてとても暖かい。

「それ貸してやるから、さっさと食え」

 そこまでして食べたいといった覚えはなかったし、口元までその言葉が出掛かっていたように思えたが、実際に出た言葉と行動はまったく別のもので、

「ありがと」

 そういって、わたしはアイスを口にしていた。
 暖かい制服に包まれて食べるアイスの味は、どこかいつもと違って。

(こんなのもいいかもなぁ)

 と、心の隅で思った。



ネタがないためにお題に挑戦。
そして失敗したような気がバリバリ(古)している。
なんかもっと何とかできたような気がしてならないや・・・。
まあ、いいか(よくねぇ)
('06/6/26)