誕生日おめでとー
「あんたのことだから覚えてないと思うけど、今日手塚先輩の誕生日だよ?」
「……は?」
それなりに
朝、学校についてポテトチップスの袋を開けた瞬間、横から手が出てきて一枚さらって行った。さらわれたポテチが友達のの口に入る直前に、そんなことを言われた。
「……マジで?」
「マジで。さぁ、彼氏の誕生日ぐらい覚えときなさいよ」
うわー。ぜんぜん気にしてなかったっつーの。
わたしと手塚先輩は付き合っている。どこがいいのかわからないけど、向こうから告白してきたので、嫌いじゃないから付き合ってみている。
「って、まさか、お前部長の誕生日忘れてたんじゃ…」
「むしろ知らなかったさ、トウジョウよ」
「モモシロだって言ってんだろ。変な読み方すんな」
「いいじゃん、いちごなあの子みたいで。」
桃城とは同じクラス。そしてポテチがごっそりさらわれた。
「……あ」
「どうしたの?」
「それで朝会った時ちょっと変だったのか」
「変ってなんだよ」
桃城が聞いてきたので、朝の手塚先輩を思い出して正確に説明してみる。
「なんかそわそわしてて、フツーに挨拶して去ろうとしたらなんかガッカリしてたような?」
「うわっ! 最悪だな、お前!」
「しょうがないじゃん! 知らなかったものは!!」
そうだよ! 言わない手塚先輩が悪いんだ!! 知らないものを最悪といわれても、こっちが知らんわ!!
「でもさー、お祝いの言葉ぐらい言ったほうがいいんじゃない? 知らなかったとはいえ、今知ったんだし」
「……それもそうか。しっかしなぁ! 何にもないっていうのもちょっと……」
ポテチあけなきゃよかったな。そしたらとりあえず渡せたのに。
……いや、ポテチもらっても微妙だな。しかもあげる相手手塚先輩だし。桃城とか菊先輩ならかまわないけどね!
なんか即席で作れないかな。幸い手先は器用だし。
「ねぇ、手塚先輩何が欲しいと思う?」
「部長の欲しいものかぁ?」
「……それはまた難しいわねぇ……」
「だよねぇ」
だとすると一生懸命考えるしかないな。
ん〜〜〜〜〜……。
あ!
たしか無地のルーズリーフが合ったはず…。あ、あったあった。
何枚かルーズリーフを取り出して、線引きとシャープと色ペンを何色か用意した。
「? 何すんだ?」
「なんか思いついたの? プレゼント」
「肩たたき券!!」
『え゛?』
見事なまでに二人の声がぴったりと揃った。普段は真逆にバラバラなのに。
「……そ、それはいくらなんでもちょっと……」
「いくら部長でもソレをもらってもなぁ……」
「これを使えば私の肩をたたき放題!」
「しかもおまえのか!!」
えー? ダメ? ナイスツッコミだけど、ダメですか、コレ。
確かに手先の器用さなんて関係ないけどさ。
「ダメダメよ! なんで誕生日に労働を課してるのよ!!」
「そうか、休まなくちゃダメだね。じゃあもまれ放題券はどうだ!」
「もまれ……!??」
「ちょっと、いや、ニュアンス的にかなりいやだぞ!?」
「いや、叩かれ放題券のほうがMっぽくてイヤかと」
「ていうか、中学生の誕生日プレゼントじゃないでしょ〜〜〜!!!?」
そんな感じで昼休み。
「プレゼント……。プレゼント、なぁ……?」
「ちょっと、そればっかり考えてて何かにぶつかったり転んだりしないでよ?」
分かってる、と返事をしてからまた思考に耽る。
まさか誕生日プレゼントなるものにこんなにも悩むなんてなぁ。
やっぱり当日に渡したほうがいいんだろうけど、今更用意なんて出来ないし。そもそも何をあげればいいのやら。
「あ! っ!!」
「ぅぉ!?」
に腕を引っ張られ、なぜか隠れるような格好にさせられる。
ナニ、と聞こうとして、右斜め前が弱点だと噂される我が彼氏と、卵ヘッドな副官が歩いているのを発見した。
「違うって手塚。多分驚かそうと思ってそんなそぶりすら見せなかったんだよ。多分」
「いや、あの様子だと絶対に忘れている。もしくは知らないな」
「知らないことはないと思うけど。手塚のファンがうるさいくらいに騒いでるからな」
ぎゃぁ。
もしかしなくても
『手塚部長の誕生日忘れてる疑惑〜っていうか知らなかったヨその通り〜』
の話しですか!?
額に冷や汗をかきながらを見ると、は呆れた顔で首を横に振った。
「……まあ、期待しないほうがいいだろうな」
「そんな、手塚」
「そもそも付き合ってもらってるんだ。多くは望まない」
……。
え? ナニコレ。なんでこんなに健気な雰囲気だしてんの?
「でも付き合ってることには変わりないんだから」
「……一度もに気持ちを告げられたことはないからな。付き合っていてもどうなのか……」
(って、ちょっとあんた!! どう思ってるか言ったことないの!!?)
(あー。うん……)
(信じられない! 何それ!!)
(いや、最初は嫌いじゃないレベルからのスタートだし? ……まあ、それでも最近は……)
最近は……。ちゃんと好きになってきていると思う。うん。
でも恥ずかしくていえるわけないじゃん!!?
(、プレゼント、決定ね)
(……ってまさか!!?)
(そのまさか。ちゃーんと手塚先輩に好きだっていいなさい)
「できるか――ッ!!!」
「あ、馬鹿!!」
つい叫んでしまった。思いっきり焦ってみるが、周りを見ても手塚先輩たちの姿はなかった。
どうやらコソコソ話しているうちに行ってしまったらしい。……良かった…。
「いえないならラブレターにでもしてしまえば?」
「もっと出来るか!! なにを書けって!?」
「ラブレター」
「ノォッ! 言わないでっ!! 大体付き合ってるのにおかしいでしょっ!?」
「付き合ってる人の気持ちを知らないのも十分おかしいと思うけどね」
ゴフッ…!!
でもいえないし、ましてや恋文なんて何をかけばいいのやらっ!
「……しかし、言うとしたら直接言ったほうがいいよなー…」
「まぁね。いえることなら」
……。
ムリ★
でも年に一度だ。ぜんぜん知らなかったし、プレゼントも用意してないし、そのぐらい言ってあげてもいいか…!?
と、いうわけで、手紙にて手塚先輩を呼び出し(何故)直接言うことに決定。
「……」
「……」
が、にらみ合うこと数分。手塚先輩が来てくれたのはいいが、緊張して顔と身体と口が動かない。
「? なにか用があるんじゃないのか?」
「……よ、用はありますっ…」
えぇい! 言うぞ! 言うぞ!?
「あ、あのですね」
「うん?」
「実は、今朝教室に行くまで先輩の誕生日を知らなくて、ですね」
「……そうか」
「当然のごとく誕生日プレゼントなんてもの用意してるわけなくて、ですね」
「ああ」
短い返答が微妙にキツイ…!!
「……それで、そのー……。ちゃんとしたプレゼントは後日用意いたします」
「いや、別にかまわないが……。用というのはそれか?」
「や、本題はこれからッス」
先輩は不思議そうに首をかしげながらこちらを見ている。
だぁぁぁっ緊張するっ!!
「あのっ!」
「?」
「わたし、ちゃんと……それなりに先輩のこと好きですよ?」
チラッ
と、先輩をみると思いっきり驚いたように目を見開いていた。
珍しい、なんて思う余裕なんぞなく、恥ずかしさがどんどんあふれてくる。
「だぁぁっ!! 恥ずッ!! 絶対もう言わない!! 二度といってたまるものかっ!!」
絶対顔真っ赤だ。だって顔が熱いもん。鏡なんか見なくたって赤くなってるのは十分わかるもん。
「」
先輩の素敵に低い声で名前を呼ばれ、必死に顔を作りながらちょっと振り返ると。
「俺には、何よりのプレゼントだ」
なんて、微笑んで言ってくれるものだから。
反則過ぎるその微笑みで、また顔が火照って、しばらくまともに先輩のことが見れなかった。
「ところで」
「なんすか?」
「この手紙に一緒に入ってた肩もまれ放題券は一体なんだ……?」
……。
………。
間違えた……っ!!
初手塚にして誕生日夢。
……てか、これ限界。もうこれ以上臭いのはムリ。
そして最後のオチ、なんだろう、コレ。
('05/10/7)