途中で見失ったヨ。(色々と…)
「……?」
最初に解凍されたのは白を基調としているSAAの男。声と目には間違えるはずがないほど覚えある。
「たったたたた隊長!? なぜここに!!?」
ずっと会いたかった人のはずなのに、頭の中はパニック状態だった。
(どうしよう、隊長の前で“この野郎”とかいっちゃったよ!! しかもここにいるのがおかしいのはわたしのほうだ!)
突然の出現に頭の回転がついていけず、は焦るばかりだ。
明らかに一触即発の雰囲気をぶち壊し、シリアスな場面をギャグに変えてしまった。いつもならここでジャッカル隊員の誰かのため息で元に戻ったりするのだが、今回はそのジャッカル隊員が固まっている。
両手を無意味に上下に振りながら無理やり冷静になろうとするだが
「うえあ、っと……その……」
まったく意味の持たない言葉しか出てこない。頭のなかはますます白くなる一方だ。
「……色々問いただす必要があるようだが……。レイニー」
「は!」
呼ばれて、シュワンツでも白のSAAでもない機装兵が返事をした。
「をつれて早く司令部を叩きに行け」
「しかし!」
「そいつの相手は、俺がする」
白のSAAの操者、グラハルト・ミルズはシュワンツを見据えながらそう言った。
「ちょ、お待ちください!」
「……なんだ、」
また名前を呼ばれていることに喜びつつそれをうまく隠しながらは異議を唱えた。
「わたしもCOBRAと戦いたいのです。お願いします、わたしにやらせてください」
「SAAもない貴様になにができる。レイニーと共にいけ。命令だ」
「……了解。ですが、気を付けて下さい。相当な手練です」
「ああ…分かっている」
ミルズが少し微笑んだのを受けて、も笑みをこぼす。
レイニーがの肩を叩き、先を促した。
「行くぞ、」
「サー!」
レイニーがを抱きかかえ、司令部のほうへ向かう。
「…あの娘、知り合いですか? 戦場の死神」
「ああ。…Phantom、とでも言えば分かるか?」
「!」
ミルズの言葉にシュワンツは目を見開く。
「ファントム!? 若さゆえに副隊長の任を得られなかったが、クラダーとしての実力だけならばジャッカルbQ、あなたの右腕と謳われたあのファントムですか!?」
「そうだ」
「まさか、あんな小娘が!? いや、女がクラダーとして務まっていたなど!」
信じられずにシュワンツは叫ぶ。先ほどマヌケな失敗を見てしまったのもあるのだろう。
第一ジャッカル隊員だということも怪しい。SAAを操るのは簡単なことではない。男でも過酷な訓練をいくつも重ね、ようやく扱えるようになるのだ。根本的に作りの違う女では着ることすら困難のはず。もし着れたとしてもSAAに振り回されるのがオチだろう。
「本当だ。アイツはなかなか優秀だぞ」
「信じられません。まだレイニーというもう一人のクラダーがファントムだといわれたほうがよほど信憑性があります」
「だろうな。しかし事実だ。…アイツが戻ってきたのなら俺ももう少し動きやすくなるな」
こんな会話が自分たちが去ったあとに行われているとは知らず、とレイニーはまっすぐ司令部のあるテスミラ城へと向かっていた。
「……それにしても、いきなり現れて驚いたぞ」
「わたしもビックリしましたよ。COBRAしかいないはずの予定だったのに…。なんでミルズ大尉とクルーガー中尉がいるんですかー」
「あ、今隊長は少佐で俺は大尉だから」
「えっ! 昇進してるんですか!? わたしは?」
「伍長」
「……アレレレレー。変わってナーイ」
敵地の真ん中だというのになんとものん気な会話である。もっとも、が一緒だからできる芸当でもあるのだが。
は耳で相手の位置、武器、SAAの種類などを完璧に間違いなく判別することができる。無論遠くなればなるほど判別できなくなってくるが、位置程度ならば多少遠くとも正確に把握することができる。敵が近くにいるのであれば、が間違いなく注意してくる。
「……大…少佐、大丈夫でしょうか?」
「あの人なら大丈夫だろう。君が一番よく知っているはずだが?」
右腕と呼ばれたファントムならば、と言外に含まれているのが聞こえてきた。は少し面白くなさそうに視線をそらし、子供っぽいと知りながらも唇を尖らせた。
「“幻”と呼ばれていた頃とは、もう違いますよ。わたしも大尉も、少佐も」
からしたら別れてから1ヵ月だが、こちらではもう2ヵ月以上の月日が流れている。
ミルズはもちろん、レイニーも色々なことがあったろうとおもう。その中で自分は何か変われただろうかと、訛っているだけではないかと、は不安に思う。
「……そろそろおしゃべりも終わりだな」
「そうですね。どうやら目的地も近いようです」
それから二人はお互いに沈黙し、テスミラ城へ急いだ。
地下通路から出ると、レイニーはいくつかの爆弾をへわたした。
「、今からいう場所へ仕掛けてきてくれ。その間に俺はもっと奥へと侵入して破壊活動を開始する」
「了解!」
はレイニーから指示を受け、持たされた爆弾を全て正確な位置に仕掛けた。
もちろん見張りやら兵士がいたが、全部倒した。ここまでで随分と制服がボロボロになってしまっている。
ドズンッ!
弾薬集積所に仕掛けた爆弾が爆発し、ついでに隣の集積所も誘爆して派手な音をたてた。
それを合図に、爆弾を仕掛けた以外のところからも爆発音と煙が上がる。おそらくレイニーが場内を徹底的に破壊するため暴れているのだろう。
が耳を塞ぎながら、轟音をたてて崩れていくテスミラ城を指定された場所で眺めていると城の方からレイニーが歩いてくるのが見えた。
「お疲れ様です、大尉」
「もご苦労だったな。おかけで楽が出来たよ」
「楽ですか。少佐が聞いたら怒りますよ? …と、少佐に連絡は?」
「ああ、今する。……少佐、聞こえますか? レイニーです。テスミラ城を爆破……。任務完了しました」
ミルズからの返事はない。だが、二人にはミルズがちゃんと聞いていることはなんとなく分っていた。
「さて、みんなと合流しようか」
「はい!」
合流後、はミルズとレイニーに挟まれ、尋問を受けるような状態にいた。
「さて、。聞きたいことが山ほどあるんだが、いいな?」
「は、はい…。なんなりと」
ヒィッと背筋を伸ばす。異様に低く響くミルズの声が恐ろしくもあり、その横で気の毒そうな顔をしているレイニーが腹立たしくもあった。
「最初の質問だ。なぜ3ヵ月前突然除隊した?」
「あ、除隊扱いだったんですか?」
「……、こっちが聞いているんだけど」
の質問に質問で返す応えに、レイニーが小さく突っ込みを入れた。は謝ってから自分にとっては1ヵ月前の出来事を思い出してみる。その前に、とりあえず誤解はといておこうときっぱりと発言した。
「わたしは自ら除隊したのではありません」
「なに…?」
「わたしは、少佐のお傍を離れようと思ったことは一度たりともございません」
まっすぐにミルズを見据え、は言った。ミルズやレイニーのよく知る、馬鹿みたいに正直な、気持ちのいいほどまっすぐで綺麗な瞳で。
「……わたしの除隊を伝えたのは、クレイズ中尉ではありませんか?」
「たしか、そうでしたよね、少佐」
「ああ。……まさか…」
ミルズの珍しく驚いた表情に、トーンの変わった声色。はミルズの考えが分かり、一回深くうなづいた。
「はい。わたしは、クレイズ中尉に“消されました”。」
そこまでで一旦言葉を切り、目を伏せた。言葉を選ぶように考えてから、またミルズとレイニーを見る。
「3ヵ月前、わたしはクレイズ中尉に大尉を裏切るよう言われました。そうしなければ、わたしの命はない、と」
『なんの御用でしょうか、中尉』
射撃の訓練をしていたところで、クレイズに呼び出された。
場所は不自然にも人通りの少ない三階の廊下。あまりいい雰囲気ではなかったから密談しなければならないような内容だと思ったのだが、人通りが少ないとはいえ廊下で話せる内容のようだし、どうやら思い過ごしだったようだ。
『伍長。ミルズ大尉を救おうとは思わないか?』
『……? なんの、お話でしょう? 今のわたしでは力不足と?』
ふ、とクレイズは口の端をあげた。それを見たは一瞬身を強張らせた。
一般的には“笑った”という表情をしたが、クレイズのものは違う。はいつもこの男の笑顔が怖かった。口元が笑っていても、目が笑っていないのだ…。
『そうではない。……この戦況、どう思う? このままではレギウムは敗北必至だ。そう思わないか?』
『……確かに、苦しい状況ではあります』
『そうだろう? このまま敗北という結果が覆るはずのない戦争が続けば、大尉は死ぬまで戦い続けるだろう。だが、大尉はこんなくだらない戦争で死んでいい人間ではない』
『……戦争にくだらないもなにもないと思います』
クレイズはの言葉を無視して話を続けた。
『大尉をお救いするために、我々で罪を捏造する』
『なっ!?』
『罪はそうだな…。反逆と内通といったところか』
バン!
は拳で壁を叩き、戸惑いの色を隠せないままクレイズをにらみつけた。
『何をおっしゃっているんですか中尉! そんなことが救いになるはずがありません!! たとえ拘束して命を長らえたとしても、必ず国に処刑されることになります! 第一、少なくともレイニーさんとバロスさんがそんなこと許すはずありません!!』
『……確か、レイニーとバロスにはそれぞれ弟妹がいたな』
『っ!』
クレイズのその一言で、には全て理解できた。
『レイラはわたしの部下、バロスの弟は早急に軍病院に入らなければ長くないだろうな』
レイニーとバロス。共にミルズを尊敬し、忠義をたてている二人を操作するために弟妹の命を脅しに使ったのだ。
ギリッ
強く噛みすぎた歯が擦れて鳴った。口の中に微かに鉄の味が広がる。
『あなたという人は!!』
『……君の場合、断れば君の命がないが、どうする?』
『命など、惜しくありません! わたしがこの世界で失うものといったら大尉ただ一人です!!』
クレイズのことをありったけの殺意をこめて睨みつけてから、踵を返した。
このことを、ミルズ大尉に伝えなければ、と!
グイッ
『あっ!?』
『余計なことをして貰っては困る』
クレイズに腕を捕まれ引き寄せられた。逃げられないよう強く強く握られた腕の痛みで顔が歪む。
の背中に、壁はなかった。触れている部分から感じるのは冷たいガラスの感触。
カチャ
鍵の開く振動がリアルに伝わって、ここから落とされるのであろうことが容易に想像できた。
『――残念だよ。君のことは嫌いじゃなかったが……さようなら』
すぐ耳元にクレイズの息を感じた瞬間、身体が重力に従い落下していた。
「…それで、気がついたら実家のベッドで眠っていました。軍服も着たままでしたし、夢でないことはわかったのですが」
シュン、との肩が落ちた。
「申し訳ありませんでした、大尉。…いえ、少佐」
「……」
「わたしがあの時中尉の腕を振り切り、少佐にことの全てをお伝えすることが出来ていれば…」
正直、あの後どうなったのか知らない。だがジャッカル隊員がここにいなくて、ミルズが戦場にいるのだから、何かあったとみて間違いないと思う。
「…」
「はい」
「お前が謝る必要はない。むしろ、俺のことをそこまで信頼してくれていることに感謝する」
「……許して、いただけるのですか?」
の目に涙が浮かんだ。
ミルズはの頭に手を置くと、戦場での顔が嘘のように微笑んだ。
「最初から責めてなどいない。だから、これからも俺の部下として、右腕として働いて欲しい」
「…っ!! はいっ……はい!! もちろんです、少佐!!」
涙があふれて、止まらなかった。
少佐に許して貰えた安堵感と、まだ頼りにされているという誇り。
嬉しさのあまり、涙を止めることなどできるわけもなかった。
「……そういえば、聞きたいことって一つだけですか? 山ほどあるっておっしゃってましたよね」
「ああ…。芋づる式に全部聞けたからな」
「芋…?」
「少佐、実はのこと心配してたんだぞ。今どこで何をしているとか、急に除隊した理由とか他にも……」
チャキ。
「レイニー…?」
「はい。余計なことはしゃべりません」
(脅しに使ってる銃、45口径だ…!)
難しい…。難しいよ少佐。
漫画の内容自体難しいんだけど、キャラの性格も難しい。もう口調とかいちいち気にして書いてないもんな(ぇ
そういや主人公は何のSAAに乗せようか。バルディッシュが一般的なようだけど。
スワッシュバックラーじゃあ、ちょっとなー。
ハワードさんが出てくるまではバルディッシュで行こう。もしくは歩兵か…。
狽、設定資料集のところに『装着可能なクラダーの身長は170cm〜210cm』って書いてある。
……。(容姿の描写しないのはこだわりなのになー…)
170cmに満たない読者の方は特注品と思っていてください!(何
今回もあってるんだかあってないんだかよく分らない管理人の見解用語集↓
●ASP−177e“スワッシュバックラー”
大戦後期の傑作機。だがコストが高すぎるゆえに量産化はされなかった。
特殊部隊用に改修されたeタイプのものをジャッカルが使用していた。
●APF−175mod“バルディッシュ改”
AGI社製レギウム陸軍現用主力機。
トータル・バランスが非常に優れているらしく、大戦中期の健闘はこの機体によるものだと書いてある。
●FR−A4“バルメ”
GAF社製ドラグノフ陸軍現用主力機。
性能は“バルディッシュ”に大きく劣っており、ドラグノフのグラダーたちは“ドンガメ”と蔑称して自嘲している。
('05/9/23)