何も考えずにやってしまった(何
「これはこれは。随分と面白い拾い物をしてきたじゃないか、ミルズ少佐」
「ああ。これほど役に立つ拾い物はないぞ、リーダス大佐」
(ひぃぃえぇぇぇ〜〜〜っ! 何この状況は〜〜〜!!)
は今、ガチガチに固まっていた。
目の前にはレギウム国民軍のお偉い方々。特殊部隊の隊員とて、所詮伍長でしかなかったでは今まで経験するはずもない面子に囲まれている。
お偉い方といっても、4人は知っている。3人はジャッカル隊員で、当たり前だがなじみは深い。グラハルト・ミルズ少佐とレイニー・クルーガー大尉。それからクラウス・ガードナー。聞いた話では少佐に昇進しているらしい。もう1人は名前だけだがよく耳にしていた人で、稀代の用兵家と云われるレオン・リーダス大佐だ。
他は国民軍総司令官のエドワード・ハメル大将と参謀長のホルスト・パールマン中将の将校お二人。
そんな人々に囲まれる中、ボロボロの制服――銃弾で開いた穴やナイフで切られて破れてたり――で立たされるのは否が応でも緊張で固まる。
「リーダス、この娘を知っているのか?」
「ええ。見たことあるのは写真だけですが。名前はたしか――」
「・伍長であります!」
思い出そうとしているリーダスの横から、敬礼しながら名乗る。頭をボリボリと掻きながらリーダスはうなづいた。
「“あの”ファントムですよ」
「ファントム…? まさか!」
「いや、事実です、中将。彼女は確かに元特殊部隊ジャッカルの隊員でミルズ少佐の右腕といわれたあのファントムです」
ガードナーがいうと、パールマンは小さな目を見開いたままを見た。
見られたは気まずそうに視線をそらし、ミルズを経てからリーダスのほうを見て小さく言葉を発した。
「……それで、その……。わたくしはどうなるのでしょうか?」
「ああ…。無論、わが国民軍で歓迎しよう。一人でも多くの優秀な部隊長を必要とする今、君の存在は非常に貴重だ」
「ぶ、部隊長でありますかっ? 伍長ごときのわたくしめが?」
リーダスの歓迎の言葉には困惑し、どもり気味に聞き返した。
リーダスはうなづくと、ミルズのほうを見てニヤリと笑った。
「どうだろう、ミルズ少佐。わたしは十分部隊長が務まるレベルだと思うのだが」
「そうだな…。確かに、実力、経験、判断力、すべて申し分ないと思う。……が」
ミルズがを見て、それからリーダスのほうへ視線を移す。
「若い上に特殊部隊の隊長としては階級が低い。命令に従うものがいるかどうかだな」
はミルズの言葉にうなづいた。死神の右腕とも呼ばれながら伍長止まりなのは女で、若すぎるから。副隊長になれなかったのもその両方が理由だ。
もっとも、ジャッカルに入りたてのときは経験や判断力が伴っていなかったし、ただの部隊員でも当然だと思っていた。が、今は違う。先の戦争を生き残り、レギウム最強の特殊部隊として立派に戦ってきた。ミルズの言うとおり、経験と判断力も十分に備わったはずである。
「まあ、階級のほうは少尉に昇進させる手はずになっているから問題ないが……」
「いきなり少尉!? わたくし見事にまったくこれっぽっちもなにもしておりませんが!!?」
困惑を通り越し、軽くパニックになりながらリーダスに言うと、リーダスは面倒くさそうに頭を掻いて手元の資料を目で追った。
「……君の戦績をみるかぎり、そのくらいの階級になっていても全然おかしくない。むしろ今まで伍長止まりだったほうが驚きだ」
「そ、そうなのですか?」
「まあ、正直皆を納得させる方法を色々考えるのが面倒だっただけなんだが」
(えぇ〜〜〜っ!!?)
が口には出せず心の中で叫んでいると、似たような顔をしているレイニーが視界に入った。おそらく同じようなことを思っているに違いない。
こんなにもいい加減でいいのか、と。
ハメル大将とパールマン中将が何もいわないからいいのかもしれないが、あまりに適当すぎる。
「階級の問題はこれでクリアするとして……。あとはどうする、ミルズ少佐」
「それはこちらに考えがある」
え、とがミルズを見ると、立ち上がり無表情のまま
「要はこいつが“ファントム”だということを知らしめればいいわけだ」
と、今一番の問題を言い放った。
「……少佐」
「なんだ、少尉」
「帰っていいですか?」
国民軍が総司令部の拠点として使用しているアルバ・ユーリア市のハルテンゲール・ホテルの一室が改造された訓練所らしきところにたち三人はいた。
現在は軍に支給された動きやすい服装に着替え、なぜかレイニーと対峙している。
ギャラリーは国民軍のクラダーたち。何が始まるのかと興味深そうに二人を見ている。
「どこへ帰るんだ。どこへ。」
「ここではないどこかへ。――ていうか、わたしが大尉に接近戦で勝てるわけないじゃないですか! 接近戦のエキスパート、“ブレード使いのレイニー”の敵うとお思いですかー!?」
「不可能を可能にする。それが特殊部隊ジャッカルだ」
「こんなところでそんな決め台詞結構ですから!」
半泣きになりながらミルズへ訴える。
そう、ミルズの考えとはとレイニーを戦わせ、その実力を部下となるクラダーたちに見せ付けるというものだった。接近戦ならばミルズさえも凌駕するほどの実力者のレイニーとそれなりに渡り合えば、誰でも納得するだろうという結構安易な考えだ。
「、別に勝たなくてもいい。お前の実力をここにいる全員に披露しろ」
「み、見世物っすか……。でもまあ、勝たなくてもいいなら……。どうせ勝てませんけど」
今まで訓練で何度も何度もレイニーとはやり合っているが、一度たりとも決定打を入れたことはない。今回も首筋に刃を突きつけられて終わるのが落ちだろう。
「レイニー、手加減するなよ」
「はい」
「手加減希望します!?」
慌てて挙手するが、あっさりと二人に却下された。
レイニーがナイフを構え、も渋々とだがしっかりとナイフを握る手に力をこめる。たとえ訓練でも真剣にやらなければ洒落にならない怪我を負うであろうことは今までの経験で十分心得ている。
「始めっ!」
ミルズの声に、レイニーがすばやく反応し、一気に距離をつめてくる。はレイニーの握るナイフの切っ先を見つめ、地面を蹴る音に耳を澄ませる。
確実に首を狙ってきたナイフを頭を倒すことで避け、レイニーの伸びた腕を掴んで勢いよく跳躍し、顔面へ蹴りを入れる。が、同様に避けられ、もう片方の足で繰り出した蹴りは、受け止められた。
「っ!」
レイニーはの足首をしっかりと持ち、壁のほうへ思い切り投げた。
――本当に、手加減する気はないらしい。
空中で回転して壁に足をつく。ぶつかった反動をそのまま利用して、今度はがレイニーに詰め寄る。
「はぁっ!!」
ガキッ!
ぶつかったナイフ同士の刃が擦れて、イヤな音がした。
かまわず二人は互いにナイフ弾き、距離をとる。着地と同時に間合いをつめ、ナイフでの攻防が始まる。
技術、パワー、スピード、すべてにおいてレイニーのほうが勝っているが、簡単に勝たせるわけにはいかない。単なる意地だが、簡単に負けたくなかった。
(……悪くない。が、少々勘が鈍っているようだな。のことだからすぐに取り戻すだろうが。やはりいきなり戦場に出さなくて正解だった)
の動きを見ながら、ミルズは一人うなづいた。
が異世界から来たことは最初に出会った時点で聞いていた。無論、最初は信じていなかったが、見慣れない服装とあまりにも“戦”に慣れていない風なところに納得せざるを得なかった。今戦争をしていない国などないこの世界で、それはあまりに不自然だったから。
(聞いたところによるとのいた世界でも戦争はあったそうだが、母国は平和そのものだったらしいからな)
銃など見たことすらなかったといっていた。
そんな世界でしばらく過ごしていたのだから、勘が多少なりとも鈍っても仕方が無いことなのかもしれない。
「てぇい!!」
「ふっ!」
普段の戦闘では絶対に言わない気合の入った声でがナイフを振るい、レイニーもそれを全力で受ける。
のパワー自体は決して強くなかったが、体重移動や相手の力を利用するのが上手いのか、その一撃一撃には相当な重さや鋭さがある。
と、唐突にがレイニーから大きく離れ、ナイフを投げた。
「! 武器を手放すか!!」
の手から放たれたナイフを避け、今度はレイニーの方が駆け出した。
グイッ!
の手が不自然に後ろへと大きく引かれた。
(なんだ…?)
殴る構えにしては速すぎるし、懐まで入ったレイニーが殴らせるわけもない。警戒しながら拳を見ていると、キラッ、との手から細い何かが出ているのが見えた。
「まさかっ!」
レイニーはとっさに横へ跳躍し、一旦足を止める。すぐその後に自分の脇をが投げたはずのナイフが彼女のほうへ戻っていった。
「さすが、気づかれましたか」
「……ワイヤーか何かか?」
「釣り糸です。いやー、戦ってる最中にくくりつけるのは大変でした」
それも、悟られずに、だ。
相変わらず相手に気づかれずコソコソと物事をやるのが上手い。
「ていうか、なんで持ってるんだ。そんなもの」
「母国ではナイフやらなんやら持ってると銃刀法違反になるんで、何か変わりにと思いまして鞄に忍ばせてました。こんな風に役に立つとは思っていませんでしたが」
ブン、と糸を持ってがナイフをまわした。
そのすぐ後。
「止め!」
キョトン、ととレイニーでミルズを見た。
「もういい、十分だ」
ミルズの視線が回りでみていた兵たちへ向けられる。視線の動きにつられてとレイニーが見てみると全員がアゴを落として二人の動きに『信じられない』といった顔をしていた。
「これで少しはが動きやすくなるはずだ。逆らう気が失せたはずだからな」
ファントムとして納得させたかどうかまでは分からないが、レイニーと互角に戦っていた姿をみれば自分たちが敵わないことぐらいどんなバカでも理解できただろう。
「……、レイニー」
「はい」
「俺は少し席を外す。後のことは任せた」
「イエッサー!」
(……少佐……?)
レイニーの返答を受けて出て行くミルズを見て、は不思議に思いながらその背中を見つめた。覚えのある、『何か』を背負ったその空気に、は思わずミルズを追いかけた。
「レイニーさん! あとよろしく!!」
「おう。……って、!?」
ノリで返事をしてしまってから気づいても時すでに遅し。ミルズを追いかけていってしまったの姿はすでにどこにもなかった。
半端だなー(笑
この後どうするかさっぱり決めてないですよ。…どーしよ(ぇ
とりあえず、過去編にでも入ってしまおうかと考え中。
一番最初にこの世界にきた話でもやってしまおう。
それなら本編関係ないし、好きなように書いてしまえるわい。
……つーか、ファントムの由来がさっぱりでてきてないじゃん!!
('05/12/31)