失敗作だー。
「・・・・・・あ」
「え?」
問屋の、何処からどうみても女の子にしか見えない冷凍マグロを常備した少年がわたしの姿を確認した瞬間小さく声を出した。その小さな声は静かな店内によく響き、ちょうど目も合っていたことから、わたしのほうからも反応を返す。
「来たね」
「・・・・・・?」
以前も聞いたような気がする流れのセリフに、わたしは首をかしげた。今度もまたなにかくれると言うのだろうか?
少年は護身用のマグロを側に立てかけると、レジの下の方でなにやらゴソゴソと漁り始めた。探し物はすぐに発見できたようで、下げていた顔を上げてわたしのことを手招きで呼んだ。
「コレ。お勧めだよ」
ドサッ!!
「――コ、コレは!!?」
宇宙船餅大和
「・・・・・・って、思わず買ってきちゃったけど、どうしよう」
と、わたしはつぶやきながらテーブルの上にある一つのお菓子袋を凝視した。
問屋の子がものすごい重量感のある音と共にわたしに出してくれたのは、それはそれは巨大なお煎餅だった。
ド派手な袋に商品名なのだろう、宇宙船餅大和というかなり危ない名前と『2枚入り』という表示がデカデカとプリントされている。そもそも『うちゅうせんべい』とは如何に。しかも2枚しか入ってない。
「そう、2枚しか、ね」
2枚という表示がとてつもなく恐ろしかった。
というのも、この異様な袋の大きさだ。どのくらい大きいかというと、小学校の頃よく何か書かされた画用紙ぐらい。――え? 分かりにくい?
ごめんなさい、わたしも表現できません。
A2とかB3とか言えば多少違うのかもしれないけど、わたし紙の大きさはA4かB5しかわからないから無理。とりあえずとても大きいと思ってくれれば間違いないかな。
で、その大きな袋いっぱいいっぱいに丸い形のものが入ってる。しかもそれがかなり分厚い。さっき試したけど口をめいっぱいに開けてもとてもかぶりつけるものじゃなかった。二枚入りだとして、一枚分の大きさを想像してもギリギリだ。
「・・・・・・なんでそんなの買ってきちゃったのかなぁ・・・・・・」
興味本意だけど。好奇心とは恐ろしい。
しかし、コレを全部食べたらすごいカロリーになりそうだ。ダイエット中の身だし、炭水化物の塊であるお煎餅なんて食べたら(しかもデカイ)・・・・・・。
先生のお叱りが怖い。
「“俺様がわざわざ考えてやってるダイエットメニューを台無しにする気か”とか言ってお説教されそうだわ・・・・・・」
ううん、むしろお説教なしに放り出されそう・・・。
わたしとしてもいままでの努力を水の泡にしたくないし、それだけはなんとしても避けなくちゃ。
「でも食べないともったいないなぁ・・・・・・」
オススメだし常連だから、って安くしてくれたけど。それでも結構値段はしたもんね。
ぐ〜〜〜
・・・・・・お腹もすいたし。
ま、いいか。食べましょう!! 今日ストレッチがんばればいいや!!
「おいおいおい。食う気か、ソレを!?」
――へっ!?
「せ、先生!!? なに勝手に入ってきてるんですか!!」
「勝手じゃねぇよ。ピンポンピンポン何度も鳴らしてるのに出てこねぇから」
・・・・・・お煎餅に気をとられて全然気付いてなかったみたい。
「なのにカギはかかってねぇし。心配して見に来てみたら・・・・・・
なんだそれ」
「うっ」
先生の指差す先には宇宙船餅大和。額に軽く汗をかいていることから、先生の常識も逸しているのだろう。
「・・・・・・すみません、つい面白そうだったので買ってきてしまいました」
「――のそういうところは天晴れだな・・・。俺様だったら絶対買わない」
「なんていうか、食欲よりも好奇心に勝てませんでした。」
お世辞にも食欲をそそる一品には到底思えない。だって大きすぎるし、袋が派手すぎる。なんていうか、目に痛い。
「確かに好奇心は誘う代物かもしれないが・・・。で?」
「『で?』とは?」
「本当に食うつもりかって聞いてんだよ」
「・・・・・・」
先生の目の前でボリボリ食えと?
普通のおせんべいならまだしも、コレを?
明らかに脂肪に早変わりするこの激烈にデカイ炭水化物のみの塊を?
「・・・・・・先生、一枚食べま「いらねぇ」
うわぁ、キッパリいわれたー。ち、一枚ならなんとかなるかと思ったのに。まあ、いざとなればお兄ちゃんか透くんがいるけど。ああ、でもこのまま一枚とっといてあとで食べると思われるのも嫌だなぁ・・・。事実あると食べちゃうような気もするし。
うーん・・・。食べたいけど・・・。味は美味しいのかどうか気になるし。でも太るよね、これは、絶対に。
「・・・・・・はぁ」
「へ?」
わたしがウンウン唸っていると、先生が異様に大きく深いため息をついた。
な、何事?
「」
「は、はい?」
「一枚よこせ」
「・・・・・・え?」
「二枚も食うほどバカじゃねぇんだろ? それに、ウチのクラブの連中が作るもんよりマシだろ」
そういって、笑う先生の顔に釘付けになってしまった。
元がいいだけに笑顔がたまらなく好きで。それに、こういうさりげなく優しいところとか、わたしの考えていることを分かってくれるところとか、すごくすごく・・・・・・。
――正直、惚れてもしょうがないと思う。
「じゃ、じゃあ。一枚お願いします」
「おう。・・・・・・でけぇなぁ、おい」
「ははは」
袋から出した大和は、袋の中で隠れていたときよりも大きく感じた。
これは何人分?と聞きたくなるような大きさのお煎餅を、男女が二人仲良く向かい合ってもち、
「いただきまーす」
バクッ
口に運ぶ。
ボリボリボリ・・・・・・
「・・・・・・味は普通ですね」
「・・・・・・そうだな。味は普通だ」
そう、味は。問題ない。むしろ美味しい。しかし
「食い辛れぇっっ!!」
そういって、先生がせんべいを投げ出すのに数分もかかりませんでした。
アレレ・・・。おかしいな。思ったより面白くならなかった。
もっとぶっ飛んだ内容にするつもりだったのに・・・。兄貴との会話で発生したネタだから所詮この程度か?
会話のなかでは『超ド級戦餅大和』って名前だったんですけど明らかに元が『宇宙戦艦』を
イメージしてたのでそっちのほうに変更しました。
第一『超ド級戦艦』ってタイトルのアニメないし、「そんな戦艦しらねーよ」っていってら
「“るくしおん”とか?(by兄貴」(エクセリヲンだっけ?)
って返ってくるし。それのアニメのタイトルは『トップをねらえ!』で、モジリづらかったのでやはり却下しました。
それにしても、糖度がない上面白くないなんて・・・。救いようがねぇなぁー・・・。
でも載せちゃいます(何
('06/4/22)