聖なる意思-6
聖なる意思
ガァンッ!
「なっ!?」
ロックスに刃があたる直前、剣を握る手に横から蹴りがはいった。
兵士が驚いている間に、その腹に拳が減り込む。
「・・・・・・ご苦労だったな、ロックス准尉」
「え・・・?」
ロックスの現在の階級は少尉。それを昔の階級で呼び、しかも自分に背を向ける人物は・・・・・・金髪。
「まさか・・・・・・」
「なんだてめぇ!! 突然現われやがって!!」
「・・・・・・」
その人は目の前の兵士たちを無視してアンとロックスの方を向いた。
ロックスはその振り返った人物の顔を見て、力が抜けたように涙した。
「・・・・・・生きて、おられたのですね・・・・・・」
嗚咽で声になっていたのかもわからなかったが、しっかりと届いていたようだった。
「ああ。遅くなってすまない、二人とも」
「・・・・・・姉、さん・・・?」
アンが呆然とつぶやく。その人はロックスのほうへ向けられていた視線をずらして、笑む。
「・・・・・・お待たせ、アン」
「!」
『お帰り、姉さん!』
『お待たせ、アン』
(ただいま、ではなく、いつも姉さんはわたしにそう返していた・・・・・・)
「・・・・・・姉さん・・・!!」
アンの目から大粒の涙がボロボロと流れた。
安心したのと、再会の喜びで涙は止まらずに頬を濡らした。
「てめぇ! 無視してんじゃねぇぞ!!」
兵士は突然現われた小娘に激怒して怒鳴りつける。
だがその娘は立ち上がったと思ったら無視を続けて上空を仰いだ。
「いいよ、落として」
「おい! なんだ、って聞いてんだよ!!」
「・・・・・・わたしのことか? わたしは・・・・・・」
ゴオォォォォッッ
上空から変な音が近づいてきて、兵士たちは戸惑いながらも顔を上げた。
上から何かが落ちてくる。うえは空ばかりで、何もないはずなのに。
その形が徐々に明らかになってくる。・・・・・・それは巨大な剣であった。
「我名はアン・フィート・クライメイア」
メイアは空から降ってきた巨大な剣の柄を掴んで、大きく横に振った。
あれほどの猛スピードで突っ込んできた抜き身の大剣を片手で軽々と掴むメイアをみて、兵士がよろける。
「まさか、剣帝アン・フィート・・・・・・!?」
「そんな! 剣帝は死んだはずっ!!」
「バカか! ハッタリだ!! もし剣帝が生きていたとしてもこんなに若いはずがない!!」
「だが、あれは剣帝の愛刀、魔法剣“オール・ティス”だぞ!! あんなものを片手で振り回せる人物がそうそういるわけない!!」
予想外の事態に兵士たちが慌てる。
まさか剣帝が現われるなんて思ってもいないイレギュラーだ。
「本物なわけあるか! 亡くなったときよりも若いじゃねーか!! そうだ、剣帝の名を名乗る不届き者を倒せば俺たち・・・・・・」
「・・・・・・静かにしろ」
言い争いを続ける兵士たちにむかって、メイアがつぶやく。
氷のように冷たいトーンに、一瞬で辺りが静かになる。
「ロックス、こいつらの階級は」
「え? ・・・・・・伍長が二人と、軍曹と曹長が一人ずつ・・・・・・ですが」
それを聞いてメイアが喉の奥で笑った。
「下士官ごときが」
スゥ、とメイアの目が鋭くなる。
「このアン・フィート・クライメイアをどうにかできると思っているのか。・・・死にたいやつだけかかって来い。剣帝の名を思い知らせてくれる」
まるで空気全部が凍りついたかのようにその場にいる全員は動けなくなる。
息もする事ができなくなるぐらい重い威圧と恐怖が全身を支配する。
―――――間違いない、このお方が・・・・・・。
≪・・・・・・いい加減にしてやれよ。本気で殺す気なんてないんだろ?≫
静かにしていたウィルがメイアを止めに入った。
それを聞いてか、ふっ、とメイアの顔が急に穏やかになる。
「まあ、冗談だけどね。・・・・・・それよりも」
メイアは後ろを振り返ってロックスに触れた。出血が酷く顔に血の気がなくなってきている。
「・・・・・・ありがとう、准尉。わたしとの約束を守ってくれていて」
ポウ、とメイアの手が光だし、その手をロックスのキズへかざす。
暖かく柔らかい光が痛みをとっていく。徐々に苦しみが薄れて呼吸も楽になってきた。
「あ、もしかして昇進してる? 准尉、なんて呼んでたけど・・・・・・」
「いえ、メイア様に呼ばれるのならなんでも。一応1階級昇進して、今は少尉です」
「そうか。・・・・・・どう、まだ痛む?」
ロックスは身体を動かして痛みがないことを確認してメイアに向かって力強く頷いた。
それに笑顔で答えて、今度はアンの方へ身体を動かした。
「アン、怪我はない?」
「・・・・・・・・・」
返事がなく、伏せられた顔からは表情が窺えない。
「・・・・・・アン?」
バシ―――ンッッ!!
アンの顔を覗こうとしたメイアの頬を、思い切りアンが平手で殴った。
突然のできごとに、叩かれたメイアはもちろん、ロックスもその他4人も唖然としてアンを見つめる。
アンは勢いよく顔を上げて、メイアのことを睨んだ。
その目からは大粒の涙がボロボロと流れ落ちていた。
「バカッ!! 姉さんのバカぁっ!! ずっと、ずっと・・・・・・待ってったんだから・・・・・・姉さんが、おまたせ、って帰ってくるの・・・。生きてたなら、どうしてすぐ帰ってきてくれなかったのよぉ・・・うぅぅ〜〜〜・・・」
「・・・・・・アン・・・・・・ごめんね」
本格的に泣き出したアンを優しく抱きしめると、アンもメイアの背中に手を回してきた。
大きくなった妹の体が5年の年月と苦労を物語っていて、メイアには辛かった。
《・・・・・・邪魔して悪いが》
バサ、と翼を羽ばたかせる音がして、全員が上を仰ぐ。
その姿を見て、メイア以外はギョッとして身構える。
「シルヴァ」
《まったく、我にそんな重いものを運ばせておいて無視したままとは》
メイアが声をかけたのを見て、ロックスが警戒を解かないまま聞いてくる。
「メイア様、このドラゴンは・・・・・・」
「ああ、わたしの連れで、シルヴァ。オール・ティスを運んできてもらったの」
そう紹介されて、シルヴァがわざとらしく溜息をつく。
《大変だったのだぞ。わざわざ城へ忍び込み、そのバカみたいに重い剣をもってくるのは」
シルヴァは人間に変身しながらそういった。
人間の姿になったシルヴァをみて、アンが赤く腫れた目を見開いて驚く。
「あなた、昨日の・・・・・・」
「・・・・・・ああ。昨日は世話になった。・・・・・・まさか、メイアの妹とはな」
横目でアンを見ながらシルヴァは言った。
驚いたまま頷いたアンをみて、メイアが小さく笑った。
「紹介するね。わたしの妹でミレ・フィート・アンクレア」
≪やっぱりシルヴァの言った通り少し似ているな≫
「でしょ?」
「・・・姉さん?」
独り言をいう姉を見上げて、アンが首を傾げる。
メイアは一瞬しまった、という顔をしてから笑って誤魔化した。
「・・・・・・で、メイアはやはりアン・フィート・クライメイアだったのだな」
溜息をつきながらいったシルヴァを、今度はメイアが驚きながらみた。
「なに・・・・・・? 知ってたの?」
「知ってたわけではない。剣帝の名前だけは我の耳にまで届いていたが、まさかこんな小娘だとは思わぬだろう」
「そうかも知れないけど・・・・・・。可能性論として言ってくれてもよかったんじゃない?」
「あの・・・・・・お話中申し訳ありませんが」
ロックスが困ったように口を挟む。
「そろそろ城へ戻りませんと、その・・・・・・」
「あ、そっか。じゃあシルヴァ、もう一度竜形態になってくれる?」
「・・・・・・まさか、全員乗せていけと言うのではなかろうな?」
「もちろん、違うわよ。乗せるのはアンとロックス少尉とわたしの三人。ほかの4人には歩いて城に帰ってもらうから」
「・・・・・・ったいして変わらん!!」
文句を言うが、メイアに軽くあしらわれ、結局乗せていくことになった。
「・・・・・・ルイ、魔法軍5番隊にはちゃんと伝令をだしたのだな?」
「は。賊の襲撃があったと、間違いなく」
謁見室で王の前に跪く顎鬚が印象的な30歳前後の、人の良さそうな雰囲気をしている男はアーク・ルイ・ディエゴといった。
その若さで知能軍の上の方にいる男で、評判は上々だが、表と裏の違いが激しかった。
(ちっ・・・・・・。まだアンクレアが殺せていないかもしれないな)
ディエゴにとって、メイアとアンのフィート姉妹は邪魔の何ものでもなかった。
魔力も強く魔術にも優れ、戦術も巧みだ。特にメイアは後輩であったにも関わらず、あっという間に自分と同じ地位まで登りつめ、おまけに越してしまいそうだった。
自分も優れた戦術師だと言われその腕を買われていたのに、こんなヤツが入っては自分の存在がかすむ。
婚約して、ようやく姉を消して、婚約者を無くした悲しい男を演じ、王の同情を買ったのに。そうしたら今度は妹のほうが軍に入ってきた。
妹は姉ほど魔法や剣術に愛されていなかったが、それでも充分の実力を持っていた。
ようやくアンのほうの信頼を得て、デタラメをいい消せそうになったのに。
「まさか剣帝の形見である魔法剣オール・ティスが盗まれるとは思っていませんでした。あの大剣はアン・フィートにしか使う事が出来ませんので」
「うむ。わたしもオール・ティスが狙われるとは思っていなかったからそこまで警戒していなかった。・・・・・・それで、大体犯人の目星はついているのか?」
「現在調査中で・・・・・・」
ガシャンッ!!
王の問いにディエゴが答えようとしたところで、何かか窓ガラスを突き破りディエゴの鼻を掠めて壁に刺さった。
「・・・なっ!!?」
ディエゴが驚いて、飛んできたものへ視線を向けたが、脳がそれを判別する前に後頭部になにかが直撃した。
呻き声もあげる事が出来ず、壁に刺さった何かの隣りへ顔面が減り込んだ。
突然の事態に王の護衛すら動く事ができない。
「き、貴様・・・・・・何者だ・・・・・・」
ディエゴは自分の頭に足を置く人物に必死で問い掛けた。
「・・・・・・アーク・ルイ・ディエゴだな?」
だが、その人は答えずそう聞きながら足にもっと力を込めた。
「ぐ・・・っ!!」
「・・・・・・っや、やめろキサマ!! 参謀長に何たるマネを! しかも、王の御前であるぞ!!」
今まで呆気にとられていた兵士の一人が、はっとして槍を突きつける。
槍を突きつけられた人物は「王の御前」という言葉を聞いて、ディエゴから足を退かし、その場に膝をついた。
「ご無礼をお詫びいたします、陛下。罰ならばあとでいくらでもお受けいたします。・・・・・・ですが今は」
キ、と顔を上げて王を真っ直ぐ見つめる。
「わたくしめに、この罪人を裁く権利をお与えください」
「罪人だと!? おのれ、何の証拠があって・・・・・・・・・」
ディエゴは途中で言葉を濁した。いや、いえなかった。
膝をつく人物の髪の色。自分を睨む青い瞳。・・・そして、この声には聞き覚えがないか。
背中に嫌な汗をかきながら、ディエゴは壁に刺さるものを確認した。
―――稀代の名刀、魔法剣オール・ティス。
(まさか・・・・・・。まさか、まさか・・・・・・)
オール・ティスは己の持つ強大な力ゆえ、見た目よりも遥かに重量がある。
だが、剣に認められたものだけは、その重量を感じずに振り回すことができるという。
そして、過去にこの剣を持って戦えたものはただの一人しかいない。
「・・・・・・生きて、いたのか・・・・・・」
ディエゴが言うと、金髪の女――メイアは立ち上がり、壁に突き刺さっていたオール・ティスを抜き、ディエゴの喉もとへ突きつける。
「地獄の底から這い上がって来てやった。キサマを裁きにな、ディエゴ!!」
切っ先が微かに喉に食い込み、真っ赤な血が下へ落ちた。
メイアは殺気を剥き出しにして言葉を続けた。
「わたしだけでは飽き足らず、アンまでも殺そうとしたキサマの所業。・・・・・・断じて許すわけにはいかない!!」
「・・・・・・はっ・・・。ここまで計算が狂うとは・・・・・・やはり邪魔なやつだな、アン・フィート」
「互いにな・・・ディエゴ」
メイアは剣を降ろして、床に刺した。
「なんだ、殺さないのか?」
「陛下の御前を汚すわけにはいかないし、殺したって何の特にもならない。・・・・・・殺したいほど憎いけれど」
「・・・・・・甘くなったな、アン・フィート。オニであったお前ならば迷わず俺を殺したろうに」
「・・・・・・・・・・・・」
メイアは答えず、ただ王へ頭を下げた。
そこへ
「はぁ、はぁ・・・・・・姉さんっ!!」
「アン、ロックス少尉。遅かったね」
「だ、だって・・・・・・シルヴァさんが遠くに降ろすんだもん・・・。って、そうじゃなくて」
アンとロックスが駆け込んできて室内を見渡した。
呆然としている王と、ボロボロになっている謁見室をみて顔が蒼白になった。
「姉さ・・・姉上、こんなにグシャグシャにしたら・・・・・・」
「あー、つい勢いで・・・」
「“つい”じゃありません!! 陛下、お怪我はございませんか?」
「う、うむ・・・。そなた、まことにアン・フィート・クライメイアか?」
「は。事情がありまして随分留守にしておりましたが、今やっと帰還いたしました」
膝を折るメイアにならって、アンとロックスが頭を下げた。
「そうか、無事で何よりだ。よく生きて帰ってきてくれた、フィート中将」
「・・・・・・中将?」
メイアが怪訝そうに顔を上げた。
5年前、たしか自分の階級は大佐ではなかったか。
その疑問に気付いたロックスが後ろから答えた。
「あの日で中将は准将に昇進したのですが、亡くなったということで2階級昇進になったのです」
「・・・・・・ならば、生きていたので准将では?」
「別に構わない。細かいことは気にするな」
そういって大きく口を開けて笑う王に、メイアは破顔した。
「相変わらずのご様子で、安心いたしました」
「わたしも、元気そうでホッとしたよ。・・・・・・フィート中将」
王は急に真面目な顔をして低く言った。メイアも頭を下げて短く返事をする。
「ルイ参謀長のことは全てフィート中将に一任する。ただし、むやみに命を奪うでない」
「は。かしこまりました」
「・・・・・・さて、わたしは下がろう。いい加減寒い」
「・・・・・・すみません」
壁の穴を見て言った王へ、メイアは苦笑いで返した。
「ちゃんと直しておいてくれよ」
「はい・・・・・・」
王がいってしまったあと、メイアは小さく溜息をついた。
≪だからやる前に止めたのに・・・≫
(だって・・・・・・。つい)
≪“つい”じゃないって、さっきも妹に言われてっただろ≫
(反省してます)
≪俺は別にかまわないけどな。・・・・・・お前の記憶が戻っただけで≫
ウィルの照れたようなトーンに、メイアのほうが恥ずかしくなって顔が赤くなってきた。
「・・・・・・ありがとう」
自分にも聞こえないような小さな声で呟いて、メイアは顔を伏せた。
嬉しいような恥ずかしいような、アンへの想いと似ているけれど少し違う、ウィルへの想いで顔が熱い。
「姉上? どうしたのですか?」
「あ、いや。なんでもない」
―――ゾク―――
アンの方を見た瞬間、背中に寒気が走った。
憎悪の念が矢のようにいくつか刺さったみたいな、痛みすら感じるようなソレ。
これは―――殺気か
「!! ・・・・・・メイア様!!」
「ディエゴ!!?」
「キサマも道連れだ!! オニめが――――っ!!!」
ディエゴがオール・ティスを渾身の力で振り上げ、メイアの背に向けてまっすぐに落としていた。
防ぐ、という選択肢がとっさに浮かんで消えた。オール・ティスを防げるようなものを持っていない。
まして、魔術など到底間に合わない。
「しまっ・・・・・・!!」
「今度こそ! 死ねぇっ!!!」
≪―――クライメイアッ!!≫
メイアに切っ先が届こうとした瞬間、メイアの体の中で膨大な力が渦を巻いた。
力は魔力を引き出すときの感じと似ていたが、自分の力とはまったく違う。
背中から溢れた力は、肉眼で確認できるほど濃縮に固まり、オール・ティスを『握っていた』。
「・・・・・・な、なんだこれは・・・!!?」
ディエゴが、驚いて声を張り上げる。おそらくこの場にいるもの全員の思っていたことでもあるだろう。
メイアの背中から、もう一本透明な腕が出ていた。その手がオール・ティスを掴んでメイアへの攻撃を防いでいた。
「・・・・・・ウィ、ル?」
『怪我はないか、メイア』
聞きなれた声が耳に響いてきた。いつもなら体の中で直接脳に響くのに。
驚いていたら、今度は体まで出てきた。上半身だけ姿を現したウィルは、ディエゴの手からオール・ティスを取り上げて、両肩に手を置いて捕まえた。
『お前のような卑劣なヤツには、少し仕置きが必要のようだな』
驚きのあまり声も出せないディエゴに向かって、ウィルが明らかに怒った声でいう。
ディエゴを掴む手に力を練って、思い切りそれを放った。
音もなくディエゴの体は後ろへ吹き飛び、壁を一つ突き破って廊下の壁へめり込んだ。
飛んでいったディエゴを目で追っていた人々がメイアに視線を戻した時、すでにウィルの姿は消えていた。
「・・・・・・・・・やっ・・・やりすぎ〜〜〜〜〜〜っ!!」
メイアはハッとして、慌ててディエゴの救出に向かう。その後をアンとロックスが恐々と追った。
「・・・・・・世界の意思?」
「まさか、世界の創世主と言われている・・・・・・あの?」
「・・・・・・そう」
謁見室の修理をしながら、手伝っているアンとロックスに事情を話すメイア。
ちなみにディエゴはなんとか一命を取り留めた。
「ですが、あれはお伽噺では・・・・・・?」
「違うみたい。実際わたしのなかにいるし。今は無理に力を使ったせいで喋る事もできないぐらい消耗してるみたいだけど」
「はあ」
困ったようにいうメイアに、信じられない、といった表情で曖昧な返事をするロックス。
これまでの経緯を聞いたが、どうにも信じがたい。
メイアが嘘をつく訳がないし、実際に何かが出てくるのも見ているが、あまりにも規模が大きすぎる。
「それにしても少しぐらい手加減したっていいのに。びっくりして自分がディエゴを殺そうとしてたことなんて忘れちゃったわ」
「いや、忘れないで下さい」
ロックスが鋭く突っ込んで、メイアが苦笑いする。
本当に、そのぐらいビックリしたのだ。まさかでてくるとは思ってもいなかった。
今までは会話をするぐらいしか出来なかったのに。
恐らくかけらを2つ手に入れたことで力が増したのだ。それで物理的に物を触れることができるぐらい実体化できたのだろう。
「・・・・・・ねえ、姉さん」
「ん? なに?」
アンがメイアのすぐ近くに来て、真剣な表情で見上げた。
「わたしも、姉さんについていく」
「ダメ」
ズバッと即答したメイアに、アンは一瞬言葉を失った。
それから慌ててメイアに理由をきいた。
「・・・・・・あのね、この旅はアンが考えているよりもずぅっと危険なものなの。ここにいればとりあえず安全だし」
「危険なんて平気!! わたしだって強くなってる!! それに、姉さんと離れたくないっ!!」
「・・・・・・それはわたしだって同じ。だけどアン、あなたはもう軍人なのよ。わがままを言っていていい子供じゃない」
「うっ・・・・・・」
「勝手に軍を離れる事は許されない。・・・・・・わたしはまあ、死んだ事になってるし、たいして関係ないけれど」
「でも!! せっかく会えたのに・・・・・・一緒に」
「ミレ・フィート大尉!!」
ビクッ! とアンが肩を振わせた。
落ち着いた声で話していたはずのメイアが突然、アンに向かって声を張り上げたからだ。
「そなたはもう下っ端の軍人の地位ではない! それなのにわたしと一緒にいたいからなどというくだらない理由でやめるというのか!!」
「・・・・・・ね、姉さん・・・」
「姉などと呼ぶな! わたしは、そなたをそのような情けない人間に育てた覚えはない!!」
「・・・っ・・・」
言葉をなくしたアンを無視して、メイアは続けた。
「ミレ・フィート大尉。同行は許さず、引き続き5番隊隊長を務め、この国と王を守り抜くこと」
「・・・・・・」
「命令だ!! 返事は!?」
「は、はいっ!!」
「よし。・・・5番隊の隊員はまた元に戻すように手配しよう」
無理矢理返事をさせたメイアは、顔をそらしてすこし辛そうな表情をしてからロックスの名前を呼んだ。
「このわがまま娘を引き続きよろしく頼む」
「は!」
メイアが横目でアンを見ると、半分涙目になって泣きそうな顔をしていた。
ようやく会えた、自分にとって絶対的存在の姉に突き放されたような気分なのだろう。
メイアは人知れず困ったような顔をして、小さく溜息をついた。
「・・・・・・次はすぐ帰ってこれるよ」
「え・・・?」
「少なくとも5年はかからないと思う。それまで、しっかりわたしの故郷を守ってね?」
「・・・・・・はい!!」
満面の笑みで返事をしたアンの頭を、メイアは微笑んで撫でた。
メイアとウィル、シルヴァは朝早くにルナジーヴァを出発していた。
日が昇る前から城壁を飛び越して、次の目的地へ向けて歩いている。
≪なぁメイア、妹たちに挨拶してこなくてよかったのか? おまけにオール・ティスも置いてきたし≫
「別に。挨拶してこなくてもまた会えるし、オール・ティスは荷物になるからね」
荷物呼ばわりの名刀。たしかに大きいし重いが、国の宝刀に向かって“荷物になる”はないだろう。
≪メイアがそういうならそれでもいいけど。・・・・・・ところで、もう一つ聞きたいことがあるんだが≫
「ん? なに?」
≪お前と妹って年の差いくつなんだ?≫
ウィルの問いに、メイアは怪訝そうに答えた。
「5つ違いだけど?」
その答えに、ウィルとシルヴァが不思議そうな顔をした。
≪・・・・・・ということは、だ。つまり5年前、メイアは11で准将だったってことか?≫
「そういうことになるね」
「ちょっと待て。アン・フィート・クライメイアは亡くなった当時22、3だと聞いているぞ」
シルヴァの言葉でウィルの言いたいことがわかり、メイアは納得して頷いた。
「あー、それはね、魔術で自分の身体を操作してたの。やっぱり子供の姿じゃ嘗められるし、仕事もやりにくくて」
たいしたことがないように言うメイアだが、それを聞いたシルヴァは表情を変えずにかなり驚いていた。
身体操作はかなりの高等魔術だ。それを11、いや、11の時すでに准将だったのだからもっと幼いときから使いこなしていたということになる。
(それで“オニ”、というわけか・・・・・・)
末恐ろしいヤツだ、とシルヴァは心の中だけで呟いた。
〜あと(あ)がき〜
ちょっと長くなってしまいました。
ずっと書きたかったエピソードだったのでついぐちゃぐちゃと色々と書きすぎてしまいました。
というか、これを書きたいがためにこの話を書き始めたようなものです。(ぇ
・・・・・・・・・・・・ていうか、本当にまとまりもなくぐちゃぐちゃ。(涙
予定ではメイアのほうがシスコンだったのに逆くさくなってるし、ロックスはでる予定なかったのにでしゃばってるし、
ディエゴはもっと嫌な人にする予定だったのに無理だったし。
それと、階級とか軍についてはさっぱり分らないので結構適当です。
間違ってても「馬鹿でー」ぐらい思っていてください。
・・・・・・所詮こんな程度さ〜♪
(UP・'04・4・1)
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