Clossing of Destinies 外伝 1
〜剣を握る意味(後編)〜
「やはり、ライトニアについたか……ジェイク」
ジェイクの前に立ち塞がったのは、第一部隊隊長であった。
ジェイクの目の前には、数十人の騎士たちが、剣や槍を構えて立っていた。その中には、かつて『仲間』と呼んでいた者たちもいる。
「王女はどうした?」
ジェイクは笑みを漏らす。不敵に、挑発とさえ受け取られるように。
「独りで逃がした。……お前たちは、ここで僕が食い止める」
一瞬の間の後、森全体を震わせるような笑い声が起こった。
「こいつ、イカれてやがる」
「いくらなんでも、一人でこの人数は……」
「……生き残るつもりはない」
ジェイクは、剣を振るった。おそらく、一行の指揮官であろう男の腕を、深く、それでも斬りおとさない程度に切り裂く。
「こ……このやろう!!」
「やっちまえ!!」
おう、と、勇ましい掛け声が轟き、一斉に騎士たちが動き出す。
先頭の三人を一太刀で倒し、尚も地響きを上げて迫る者たちを、次々と切り裂いてゆく。
この状況でさえ、ジェイクは、決して致命傷を与えようとはしなかった。戦闘不能と判断すれば、次の者に攻撃を移す。
騎士たちの中には、それを余裕のないためと判断し、油断するものもあった。しかしそのような者は、一瞬の内に、怪我人の仲間に加えられた。
ジェイクは、人を殺したくなかった。
傷付けるのだって、本当は嫌だ。しかし、彼らを無傷で追い返す事は不可能だし、レフィを危険にさらす事になりかねない。それだけは、どうしても避けたかった。
どうにか、諦めて欲しい。死者が出る前に……。
しかし、その願いが、届く事はない。ジェイクの剣の甘さが、ついに相手の攻撃を許してしまう。
疲労と脚の怪我の痛みが重なり、攻撃をかわすのが一瞬遅れた。右腕が切り裂かれ、紅いものが腕を伝って落ちる。
俄かに活気付いた騎士たちが、次々と太刀を浴びせる。跳び下がってそれをどうにか避け、再びジェイクは攻撃に転じる。最早、何も考えずに、ただ身体の反応するまま剣を振り回しているのと大差なかった。
脇腹を切り裂かれてよろめき、その体勢からなおも剣を振るう。
いつまでこれが続くのだろう。
仮初めに過ぎなかった平和。結局いつまでもなくならない争いを、ジェイクはふと思った。
無用の血を流し、限界を超えてまで戦う理由は何だ? なぜ、誰も止めようとしない?
「ちっ……くしょおおぉぉぉ!!」
やり場のない怒りと苛立ちに、ジェイクは乱暴に叫んだ。
戦いの風景のなかに、死の光景がちらついている。例えそこが地獄であろうと、どうせ報われない想いから解放されるのなら、この世よりずっとましに思えた。
ほんの一瞬動きを遅らせれば、自分はいともあっさりと、あちらの世界へ行ってしまうだろう。
でも、今はだめだ。心地良い最期を身体が望もうと、こちらの世界に踏み止まらなければ。
「貴様……なぜ倒れない!?」
誰かの声が聞こえる。何人目の敵なのか、最早定かではない。
ジェイクは答えた。
「それは……守りたい人がいるからだ!!」
自分は、笑い者になるのかもしれない。それでいい、と思った。
ジェイクは確信していた。自分は今日、ここで死ぬために生まれてきたのだと。
撤退、と声が聞こえた気がした。勇ましい足音のかわりに、呻き声とそれを引き摺る音が聞こえ、やがてそれも遠ざかってゆく。
終わった、と思った瞬間、疲労と痛みに襲われ、ジェイクは意識を失った。
レフィは走っていた。
胸の奥に熱い痛みを感じながら、それでも足を止めずに……。
しかし、もう限界であった。
胸のずっと奥が、激しく痛んでいるように感じた。
――戻らなくては。
普段は優しいジェイクに、あれほど強く言われたにも関わらず、レフィはジェイクが犠牲になるのを、放っては置けなかった。
「ジェイクさんには、関係ないじゃない……。ライトニアも、私も……」
なぜ彼は、助けに来てくれたのだろう。
なぜ自ら犠牲になってまで、レフィを救おうとする……?
「わからない……。どうしてジェイクさんを、死なせなきゃいけないの……?」
彼はいつも、独りで戦おうとしていた。誰よりも早く、誰よりも多くの傷を負い、それでもまた、前に出て、戦い続ける。
レフィはいつも、ジェイクに守られていたような気がした。自分が受けるはずだった傷の多くは、ジェイクの身体に刻まれていた。
それは……互いの役割の違いではなく……
もっと別の、理由があった?
「やはり、戻らなくては!!」
何も犠牲にしないと、いつか誓ったのを思い出した。
犠牲になんかしない。……させるものか。
――歴史は繰り返す――
身体に、鈍い痛みが走った。それだけではない、動かそうとした手足は、疲労のせいか、普段よりずっと重く感じられた。
生きていた、と思った瞬間、ジェイクは安堵した。生きている事が嬉しかったのではなく、これで少しでも長く足止めできる、という意味合いであった。少しでも長く生き延びようと、ただがむしゃらに戦っていた時と、心の内は変わらない。
その時ジェイクは、傍らに、人の気配を感じた。身体に鞭を打つように起き上がり、剣を構える。
傍らにいた者は、びくっと身体を震わせたように見えた。襲ってくる様子はない。
「ジェイクさん! 私です!!」
その声に、ジェイクの眼ははっきりと覚めた。
「レフィ……さん?」
そこにいたのは、随分前に別れたはずの人物であった。ジェイクは、それが意味する事を理解する。
「……戻ってきてしまったんですね……」
「……当たり前でしょう?」
その低い声から、レフィが怒っているのだとわかる。
「あなたはどうして、自分一人傷付こうとするんですか?」
瑠璃色の瞳は、厳しく細められ――しかし、そこに溜まっている雫を、隠す事は出来ていなかった。
「……それは……」
「誰かを犠牲にして生きる事が、幸せだと思っているんですか!? あなたを失って、私たちがどれだけ悲しむか、わかっててやっているんでしょうね!?」
「でも……国を失う事になった方が、あなたは苦しむと……」
レフィは王女。国を安泰に導く事が使命であり、そのために全てを投げ出す覚悟がなければいけないはずであった。
「国を失ったって、あなたを失ったって、私は悲しい! だから……私は両方とも救います」
涙を浮かべた瞳で笑い、それでもきっぱりと、レフィは言い放つ。
「わがままですか? 欲張りですか? でも文句は言わせません。自分の命を犠牲にする事で、私とライトニア、両方守ろうとしたあなたには」
ジェイクは溜め息をつき、俯いた。そして、堪えきれず、笑い出す。
「ジェイク……さん……?」
レフィはあっけにとられ、まだ涙の残る瞳を、ぽかんと見開く。
「……いや、レフィさんには敵いませんね。……そんな風に言われたら、僕も死ぬわけにはいかない」
レフィはその言葉に、安心したように笑った。
「それは良かっ……」
風を切る音がした。
ジェイクは、矢が飛び、レフィの左肩に突き刺さるのを、はっきりと見た。
レフィは小さく悲鳴を上げ、地面に倒れる。
「レフィさん!!」
駆け寄ろうとしたジェイクの前に、剣が横向きに立ち塞がる。
――いや、正確には、ジェイクと、レフィの首の間に。
「こんな所でのんびりお喋りとは、暢気なものだな」
ジェイクは眼を見開いた。今、眼の前で、レフィの首に剣を向けている男は。
かつてのジェイクの上司、ノルトンであった。
「貴様……その手を放せ!!」
ジェイクは叫ぶ。
ノルトンは、ジェイクに冷たい視線を送り、レフィの髪を掴んで、引き摺り起こした。レフィが小さくうめく。
「何をする気だ!!」
「……ライトニア王と王女は、よく似ているらしいな」
レフィは、首筋に、ひやりとした感覚を覚えた。
「ライトニア王の首を持ち帰れば、我が王も、さぞお喜びになるだろう。……褒賞は俺のものだ」
レフィの白い首筋に、紅い筋がつく。
「この……外道がああぁぁぁ!!」
ジェイクは叫んだ。しかし、なす術はない。何がおかしいのか、ノルトンは笑う。
「外道……か。ならば訊こう、俺が外れた道を、敷いたのは誰だ?」
「それは……」
人間だ、と言うのは簡単だ。しかしそれならば、彼もまた人間。彼自身の敷いた道もまた、人の道である。
言いよどんだジェイクを見、ノルトンは話を続ける。
「我らガイアロード騎士団は、主たる王の示した道を進むのが、使命ではないのか? ……外道は貴様の方だ、ジェイク。騎士団の面汚しめ」
ジェイクは奥歯を噛み締めた。
彼の言葉は、正しかった。結局、人の死を避ける道はない。
ガイアロードは、広大な土地を持ってはいたが、決して豊かではなかった。自給自足同然の村で、飢えにより死ぬ者も少なくなかった。
ジェイクは、村を離れるまで、そのような死を迎える者を、目の当たりにしてきたのだ。
しかし……。
「王が命ずるならば、人を殺す事に、何の罪悪感も感じないのですか?」
そう言ったのは、レフィであった。
「綺麗事を言うな! 貴様を斬らねば、我が国の民が苦しむのだぞ!!」
「……わかってない」
レフィは落胆したように言った。
「領土を増やし、国を豊かにしようと考える前に、なぜ民たちがこんなにも苦しむのか、考えようとはしなかったのですか?」
レフィもまた、一国を背負う者。他国の民とはいえ、苦しむのを放ってはおけない。それを平然と出来る王が、腹立たしくもあった。
「民が苦しむのは、重税のため。地方の官吏が懐を肥やすためだと、気付いていないのですか……?」
レフィはその腕を、何かを探るように動かした。
「うるさい!! この国の民でもない貴様に、何がわかる!!」
「王が有能か無能かの見分けくらいつきます!」
レフィの手が、何かを握り締めた。
「ガイアロード王は無能よ!!」
「貴様ぁ……減らず口を叩けぬようにしてやる!!」
ノルトンは、レフィを自分の身体から離し、剣を持った腕を横に開く。
「レフィさん!!」
ジェイクが叫び、駆け寄る。しかし、身体の痛みに邪魔され、動きが鈍る。
間に合わない。
レフィの首の付け根を、ノルトンは剣で横向きに薙ぎ払った。
銀色の糸が散る。
そして……
それだけであった。
ノルトンは、腕が軽い事に気付いた。胴から切り離されたはずのものが、手元にない。
ノルトンの手に残っていたのは、銀色の毛の束だけであった。
「くそおぉぉ!!」
ノルトンは髪の毛を投げ捨て、顔を上げる。そこには、髪の毛先を、鎖骨の下の辺りで乱した王女が、地面に突っ伏していた。
「これ、役に立ちましたよ」
レフィはその態勢のまま、細身の剣を持ち上げて見せる。
「この小娘がぁ!!」
止めを刺そうと振り下ろされた剣を、ジェイクが受け止めた。
剣の打ち合わされる音が、辺りに響き渡る。
実力はほぼ互角。――いや、ジェイクが僅かに上を行っているだろう。
しかし、先程負った傷が、ジェイクの剣を鈍らせる。時間が経てば経つほど、ジェイクは劣勢に追い込まれていった。
「駄目だ……負けない……負けられない!!」
ここで負けてしまえば、レフィの命は奪われる。それだけは、許してはならない。
ノルトンの手が、後ろに動いたように見えた。
突きが来る。
そう直感したジェイクは、横側に回り込むようにして避ける。強く振り切った腕の横に、微かな勝機が見えた。
「そこだっ!!」
ジェイクは剣で、ノルトンの横腹を薙ぐ。剣は、狙いを違わず、そこを切り裂いていた。
「ぐあっ、くっ、くそおぉ!!」
ノルトンはよろめく。しかしその左手は、腰に伸びていた。
ノルトンは、腰の短剣を引き抜く。そして、信じられないほど素早い構えから、それを投げつけた。
倒れ伏している、レフィの身体へ。
「レフィさん!!」
ジェイクの叫ぶ声が聞こえた。レフィは身体を起こし、どうにか避けようとする。しかし、激しい痛みが、それを許さない。
ジェイクは一瞬の迷いもなく、その決断をした。
身体を大きく回転させながら振り向き、短剣を叩き落とす。これから起こる事の全てを、思い浮かべながら。
レフィは、ジェイクが思い浮かべた通りの事を、その眼で見た。
ジェイクの背後にいたノルトンが、右手に残った剣で攻撃する。
紅く濡れた切っ先が、ジェイクの胸から突き出す。
目の前が、紅く染まり……
「いやああぁぁぁっ!!」
――歴史は繰り返す――
「ジェイクさん!!」
ジェイクは、そのまま、前のめりに倒れた。紅いものが、ジェイクの広い背中に広がっていき、やがて地面に染み込む。
レフィは、震える腕で、ジェイクを抱き起こした。
息は、ない。
「ゆる……さ……ない……」
身体の痛みも忘れたように、レフィは細身の剣を構えた。
「許さない、許さない、許さない!!」
レフィは剣を構え、がむしゃらに突っ込んだ。傷の痛みによろめいたところを、軽くあしらわれ、それでもなお攻撃する。
「許さない……許さない……っ」
レフィは嗚咽していた。朦朧とした意識の中、届くはずもない距離から、剣を振り回しながら。
ジェイクさんを死なせた、あいつが許せない。
みすみす攻撃を許した、ジェイクさんが許せない。
でも、それ以上に。
また誰かを傷付けた、自分が許せない。
「うあああああっ!!」
剣を振り下ろしたのか、倒れたのかもわからない。ただ、その瞬間レフィの剣は弾かれ、その勢いで、レフィは腰から地面に落ちた。
「遊びは終わりだ」
ジェイクの血に濡れた切っ先が、目の前に見えた。それがすっと、上に持ち上がる。
レフィは瞳を閉じた。
――ごめんなさい。
誰にともなく、心で呟く。
これでいいんだ。もう私のために、誰かが傷付いたり、命を落としたりする事はない。
レフィは終わりを待った。
高い金属音がした。レフィは瞳を開く。
一人の男が、レフィの前に立ち、ノルトンの剣を受け止めていた。
胸の傷から、血を流しながら。
「ジェイク……なぜ立ち上がれる!」
男は答えた。
「……守りたい人がいるからだ」
ノルトンの剣が、弧を描いて飛んだ。
「……お前を殺すつもりはない。さっさと立ち去ってくれないか」
「……う……」
ノルトンは後ずさる。
「くそおぉっ!!」
ノルトンは、その場から走り去っていった。
「ジェイクさん……!」
感謝の念を込め、レフィはジェイクに手を差し伸べ、その名を呼ぶ。
ジェイクは振り向いた。
その瞳で、優しく笑う。
――良かった。
その言葉は、声にはならず、ただ唇が、形作っただけであった。
ジェイクは、レフィの胸に、飛び込んでいた。
「ジェイク……さん?」
レフィは、途惑いながら、呼び掛けた。
ジェイクは答えない。
「ジェイクさんっ!!」
レフィはジェイクを、身体から引き離す。
ジェイクは、レフィの腕から滑り落ち、地面に横たわった。
その表情は、穏やかに微笑んでいるようだった。
「いや……。どうして……?」
レフィはがくりと膝をつく。ジェイクは、片方の瞳を開き、レフィの頬に、そっと手を伸ばした。
「レフィ……さん……」
震える唇が、そっと語り掛ける。
「僕は……あなたを……愛し……て……」
頬に触れた手は、ゆっくりと、地面に落ちた。
その言葉は、時に残酷に、人の心を突き刺す。
「嘘……でしょ……?」
――歴史は繰り返す――
――何のため?
かつて幾度も繰り返した言葉が、胸の内に蘇っていた。
――何のために戦ったの?
結局平和は訪れなかった。争いはなくならなかった。
――何のための力だったの?
人を救うための力。それは、魔物がいるから必要だったのではなく――そう、人が生きているから、必要だったのではないのか。
事実、人はこうもあっさりと、人によって命を失う。
――何のために、神は人を苦しめるの?
かつて、クライン――旅の仲間であり、現在は自分の護衛をしている少年――に聞いた、運命の守護神の話。彼は、人に試練を与える事しか出来ないのだという。幸運は、自分の力で掴み取るしかないのだと。
ならば、幸運に手の届かない谷底へ落とされたら、どうすればいい?
――それでも必死に手を伸ばすんだ。手の届かないものなんてない。おれたちは、それだけの力を持って、生まれてきたんだ――
――その言葉、信じてもいいですか……?
レフィは、傍らに横たわる青年を見た。彼は静かに、レフィに微笑みを投げかけていた。
レフィは立ち上がり、天に両腕を伸ばす。
「天よりきたる、清き光よ……」
レフィは瞳を閉じた。
「消え去りし命に、聖なる祝福を……」
彼女は気付かない。その全身から溢れる、金色の光に。
「大いなる恵みを与えよ……!」
一筋の光が、倒れた男の元に降り注ぐ。
それは、二度と起こらないはずの、奇跡。
――届いて。
身体を駆け抜けてゆく力に、ゆっくりと意識を失いながら、レフィは願っていた。
その手が幸運に届く事。
再び奇跡が起こる事。
想いが運命を変えられる事を――。
「ジェイクさん、もう一度……目を開けて!!」
光の奔流が、二人を飲み込んでいった。
――歴史は繰り返す――
青年は、ゆっくりと、瞳を開いた。
目の前に、一人の少女が横たわっている。一瞬息を飲んだが、彼女が静かに呼吸している事に気付き、ほっと息を吐いた。
結局、また、助けられてしまったのだろう。
――行かなければ。
ふと青年は、そう思った。自分が生きているという事は、まだやり残した事があるのだろう。青年に思いつくものは、一つしかなかった。
少女が目を覚ます前に、ここを離れようと思った。彼女がこの事を知ったら、また苦しめてしまう。しかし青年は、それをしなければならない。
他ならぬ、彼女のために。
立ち去ろうとした青年は、彼女の左肩の傷が、放置されていた事に気付く。出血はほとんど止まっていたが、紅く染まった傷口は、痛々しい。
青年は、自分の頭に手を伸ばし、白いバンダナをはずした。
それは、彼が騎士になると決意した時から、ずっと彼と共にある、大切なものであった。しかし、だからこそ彼は、彼女に持っていてもらいたいと思った。
青年は、少女の傷を、バンダナで縛る。そして、静かに眠る少女の額をそっと撫で、小さく呟いた。
――愛してる――
レフィははっと目を覚ました。
「ジェイクさん!?」
レフィは辺りを見回した。ジェイクの姿はない。
レフィはふと、全て夢だったのではないか、と感じた。
「そうよね。ジェイクさんが、あんな事言うはず――」
レフィは、左肩に違和感を感じ、言葉を切った。
痛む傷口の上から、見慣れた白い布が、巻きつけられていた。
夢じゃない。
ジェイクさんは……本当に……
「どうして……っ」
胸が苦しい。
考えてみれば、いつもそうだった。ジェイクが、自分の身代わりになって、傷付く度に……
かわってあげたいと思った。
人は、それを、愛と呼ぶの?
「ジェイクさん!!」
レフィは、力の限り叫んだ。
答える者はない。ただ、こだまが、虚しく響いただけであった。
「ジェイク……さん……」
風が吹き抜けてゆく。レフィの心の中も、冷たいものが吹き抜けていた。
その言葉は、時に残酷だ。
――歴史は繰り返す
しかし、その結末は、同じとは限らない
未来は――
〜後書き〜
みなさんこんにちは。外伝その1は、お楽しみいただけましたか?
――いや、楽しむものじゃないか。
なんだか、本編よりマジな(もしくは重い、もしくは暗い)話になってしまいましたね。「なんだこの展開は!!」とか怒らないでください。この続きは、いずれ書くつもりですから。(このまま終わったら、エピローグの結末が……)
それではまた、次の作品で。
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