RING
「花森くんを・・・暗殺者にすることかね?」
「それだけじゃない!なぜ何も知らないあいつを・・・あいつは、暗殺者には向かない・・・!!」
ムキになる一彦をみて所長が「くくく」と、のどの奥で笑う。
「何がおかしい!!」
「君は本当に“宗明”に似てきたね・・・。彼も、君が後輩になった時こうしてここに来たよ」
「!!!」
一彦は目を見開いた。“宗明”という名前を聞いたからなのはあきらかだった。
しかし、それも一瞬。すぐに所長を睨みつけ、ずっと黙っていた事を口にした。
「貴様が殺したのだろう、宗明を!・・・忘れもしない、あの仕事の日・・・。貴様はわかっていたはずだ。
護衛の“リング”がいることを!そして、その“リング”に宗明の力がきかないことを!!」
そうだろう!と、詰め寄る一彦。
そのことに全く動じない所長は、イスの背もたれに体を任せた。
引出しからタバコを取り出して吸い始める。
一彦は動きたいのをじっと我慢して所長の言葉を待った。
「・・・君は・・・本当に人聞きの悪い事をいうんだね・・・」
余裕を隠さない所長。ただつけただけのようにタバコを灰皿に押しつけて消す。
「どういう事だ?」
一彦の眉が微かに動く。
続けて所長が言葉をつなげる。
「宗明には事前に言ってあったんだよ。護衛のリングがいる、とね。・・・まあ、
宗明の力が通じないほどのリングだとは思わなかったよ」
「宗明の名を口にするな!!」
「あんさつしゃ・・・って、あの暗殺者・・・ですか?」
「他にどんな暗殺者って単語があるのさ・・・」
光久は呆れ気味に言った。
・・・が、さすがに突然暗殺者だといわれてすぐ信じられる者は少ないだろう。
「・・・と、いうことは・・・自動的にわたしも暗殺者に?」
「そういうことだね。あいつの先輩も暗殺者でさ。まあ、あいつは自ら望んで暗殺者になったんだけど・・・」
「そうですか・・・。それで、あんなに・・・。」
瑞江は手を顎に持っていった。先程の一彦の態度の違いを考え込むように。
光久も、それから黙って虚空を見つめた。
沈黙を破ったのは瑞江。
「光久さん・・・」
「ん?」
「わたし、いきます」
瑞江はしっかりとした眼差しで光久をみつめる。
踵を返してすぐ角にある階段を下りる。
光久は慌てて瑞江を引き止めた。
「ちょ、ちょっと!瑞江ちゃん!!だいたいわかったけど、どこに行くのさ!?」
「所長室です。」
(ああ、やっぱり!?)
光久は瑞江の前に回りこむ。
『預かれ』と、いう言葉の中には『自分の後を追わせるな』という意味がある。
そんなことがわからないほど阿呆ではない。
「瑞江ちゃん、あいつの後追ってどうするんだい?君はここに来たばかりだし、
先輩のあいつに任せておいたほうがいいよ」
「でも、わたしのことです」
「え?」
光久は驚いた。
「一彦さんはわたしのことで所長の所にいったんでしょう?もしかしたら、自分の事かもしれないけれど・・・。
でも、わたしが関係している事は間違いないんですよね?
わたしが後輩にならなければ、一彦さんは静かに仕事をこなしていた・・・」
「た、確かにそうかもしれないけど・・・。ここで君がいったって何も変わらないよ。多分、他の人の・・・
たぶんマリ姉さんの後輩になると思う」
光久は焦りつつ瑞江をなだめようとする。
きっと、ここで所長室にいかせたら自分の命もないだろう。
「わたし、暗殺者になります。」
「だから・・・。・・・・・・・はぁ!?」
「暗殺者になって、一彦さんのサポートをします!」
ぐっと手を握り締めて目を光らせる瑞江。
光久はその言葉にさらに慌てる。
「ちょちょちょ・・・!!ちょっと瑞江ちゃん!?君、自分で何言ってるかわかってるかい?」
「もちろん。」
光久とは裏腹に冷静な瑞江は、きっぱりと返事を返す。
「・・・なんだ・・・って?」
「宗明は君の所為で死んだ―――そういったのだよ」
所長室。相変わらず二人のにらみ合いは続いていたが、雰囲気は一変していた。
一彦の勢いが消え、顔が蒼白になっている。
明らかに動揺している。
「君はあの日、ついてくるな。そういわれていたはずだ。・・・なのに、いうことを聞かずに
君は宗明の後を追ったね?」
「・・・・・・・・・」
一彦が冷や汗をかく。
所長のいっていることは正しい。確かに、あの日―――俺は・・・
『宗明!』
『一彦!?何故ついてきた!』
記憶の中の宗明。今の俺とにている。
顔はそうでもない。・・・けど、彼も女顔で、今の俺と雰囲気も似ている。
くせっけの彼は肩まで髪を伸ばしていた。癖といっても少しシャギがはいっているぐらいだが、
ストレートだったらもう少し長いだろう。
丸顔で、目も丸く、大きい。
俺は・・・宗明の優しい微笑みが大好きだった・・・
『帰れ、一彦。今回は危険なんだ。お前がいては集中できない』
『僕だって、足手まといにはならない自信があるよ!』
『・・・そうじゃない、一彦』
あの時の肩を掴む宗明の手の温もり、まだ覚えてる。
男らしい、大きな手。女顔と不釣合いで、よくからかった覚えがある。
『宗明!宗明―――!!』
『・・・無事・・・か?一彦・・・。』
『僕は無事だよ、しっかりしてよ宗明!!』
『大・・・丈夫。たいしたこと――ない・・・さ・・・・・・』
『・・・!?むね・・・あき・・・?むねあきぃ―――――――っ!!』
あの時宗明は俺をかばいつつ、相手に攻撃をしてさしちがえて死んだ。
俺はずっと、所長が仕組んで宗明を殺したと思い込んでいた・・・。
本当は・・・俺が・・・?
「そう、君が殺したのだよ。武上一彦」
「・・・っ!」
一彦は懐から一本の拳銃を取り出した。
大きくはないが、普通の拳銃よりは大きめだ。
いつも持っている自分で作った愛用の拳銃“白狼”。
一彦は白狼を所長の額に突きつける。
「それで私を殺すかね?」
「くっ・・・!」
一彦は手を震わせながら銃をしまう。
「そう。それでいいんだよ、一彦」
余裕の笑みを浮かべて所長は一彦の頬を愛しそうになでる。
その憎しみに歪んだ顔を。
「君は本当に、私のお気に入りの作品だよ。まったく、いいものを作ってくれたものだ。
宗明もそうとうだったが、君はそれ以上だ。死んで役に立ったな」
「貴様!!」
――コンコン
一彦は振り上げた手を下ろした。
「・・・入りたまえ」
「失礼します」
「!瑞江!?・・・光久!!」
入ってきたのは瑞江。
一彦は後ろにいた光久を怒鳴りつける。
「どうしても行くってきかなくてさ・・・」
光久がもの凄い迫力の一彦に後ずさりをしながら言い訳をする。
「一彦さん・・・」
落ち着いて、と瑞江が近づく。
そして
「一彦さん、わたし暗殺者になります。あなたのサポートをしたいんです」
「なっ!?」
「・・・ほぅ」
驚く一彦に対してうっすらと微笑する所長。
「なにを言ってるんだ!それでは君の・・・」
「いいえ。どんな方法でも罪を償うことはできるはずです!
光久さんから聞きましたけど、ここでは罪のない人の暗殺は決してしない。
だから、人を苦しめる人に・・・わたしのリングで罰を与えたいんです」
「殺すということは君のいっている罰というレベルとは違う!!たしかに、ここでは無益な殺しはしない。
・・・だけど、人を殺めるという罪がまた増えるんだ!どんな人間を殺しても、罪には変わりない」
一彦が続けて言葉をいおうとすると、所長が口を出す。
「君が言っても、説得力がかけるんじゃないかい?それに、本人の意思だ。
君の時もそうだっただろう?」
「・・・・・・いちいち俺の時の事を持ち出すな!!」
一彦はそう怒鳴ると、踵を返して部屋から出て行く。
バンッと、大きな音が部屋に響いた。
「し、失礼しました!」
瑞江が慌ててあいさつして出て行く。
光久も、所長を睨みつけてから瑞江を追う。
「一彦さん!待ってください!!」
瑞江が息を切らして懸命に後を追う。その後ろを光久。
もう結構長い間この状態だ。
しびれを切らした光久が前方に見える一彦の背中に声をかける。
「い〜ちひこ〜。いい加減返事してやったら?もう落ち着いてんだろ?」
瑞江が振り向く。もちろん、この間も歩きっぱなしだ。
光久が視線に気付いて一彦を指差す。
「わかんない?瑞江ちゃん。ほら、さっきのトゲトゲした雰囲気なくなってるっしょ」
そういわれて瑞江は一彦の背中を見る。
瑞江にはよく分らなかったが、雰囲気的に感じることはできた。
光久は続けて
「それに、君は気付いてないみたいだけど、出てきてすぐより歩調がゆっくりになってるんだよ。
あいつ照れ屋だからさ。気付きにくいように少しづつ合わせていくつもりだったんだ」
(・・・あ・・・!)
言われてみれば、と瑞江は思った。
ついさっきも歩くのが楽になっていたような気がする。
光久はうんうん、と頷くと足を止めている一彦をみた。
「・・・余計な事をペラペラと・・・。光久、覚悟はできてるだろうな?」
「煤I!(ギクッ)」
背中を向けたまま話す一彦。
光久はあ!として半歩下がった。
「冗談だよ。・・・ありがとう、二人とも。正直・・・来てくれなかったら俺はあのまま所長の顔を殴ってた
・・・自分の手も、二度と使えなくなるところだったよ・・・」
所長の“リング”は防壁。あらゆる攻撃を無効化できる。
物理攻撃、“リング”、生物兵器などなど。色々だ。
もしも殴っていたら、一彦の殴った力が分散されず、そのまま手にかえってきて骨が粉々になるところだ。
そういう意味ではタイミングが良かった。
一彦は軽く振り向いて少し笑った。
「・・・でも、ごめんなさい、一彦さん。わたし・・・自分の事しか考えてなくて・・・あの・・・」
「・・・・・・いいよ、それで。本当に、俺もそうだった・・・」
瑞江の言葉を切るように一彦が話し出す。
完全に二人の方を向いて苦笑いする。
「きっと・・・今、・・・・・・と同じ顔をしてるんだ・・・」
二人に聞き取れないよう小さく呟いた。
瑞江には聞き取れていなかったが、光久には聞き取れた。
訓練された耳だ。聞き慣れた一彦の呟きを逃す事は無かった。
しかし、光久は聞かなかったことにした。わざと聞こえないふりをする。
一彦も光久が自分の呟きを聞き取った事を気付かないわけが無い。
「・・・じゃあ、明日から“リング”の使い方を教えてあげるよ」
「本当ですか!」
「ああ。所長室に乗り込んでくるぐらいの意気込みなら平気だ」
――――この時、三人はまだ気付いていなかった。
・・・・・・『破滅』の“リング”の恐ろしさに――――
〜あとがき〜
ヘボッ!!短いし!!
いや〜ん・・・。しかもしょっぱなから一君キャラ壊れてるし!!
設定上ではもっと心優しいのんびりとした青年なんですぅ・・・
しかも(×2)この後考えてないし(爆)
・・・あ、あっ!石投げないでぇ・・・(痛たたた)
瑞ちゃんは瑞ちゃんでもう・・・もう少しあとで強くなりましたって所を
書こうと思ったんですけどが・・・。
やっぱり計画性が無いと駄目って事ですね!
ふぅ、こんな感じの小説ですが今後ともよろしく
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