RING
「・・・じゃあ、明日から“リング”の使い方を教えてあげるよ」
「本当ですか!」
「ああ。所長室に乗り込んでくるぐらいの意気込みなら平気だ」
――――この時、三人はまだ気付いていなかった。
・・・・・・『破滅』の“リング”の恐ろしさに――――
―――コンコン・・・コンコン・・・
もう何回叩いただろう。
そう思いながら一彦はため息をつく。
昨日はあの後特に何も無かった。
瑞江に何時頃迎えに行くとか、早めに準備をしておけとかそんなことをいった覚えがある。
それと・・・
『あの、わたし朝はちょっと苦手なんですよ・・・。だからもしかしたらなかなか起きないかも・・・』
(・・・ちょっと、ね・・・)
一彦はドアの前で苦笑いしながらどうするかを考えた。
ここで透視の力を使えば、瑞江が本当に寝てるのか無視しているだけなのかが分かるが
流石にそこまで無神経ではない。
「瑞江!!起きろ!何時間待たせる気だ!!」
・・・嘘である。実際は10分もたっていない。
しかし、その声で目が覚めたのか部屋の中でドン!きゃあっ!?などの
音やら叫び声が聞こえる。
カチャ・・・
「・・・すみません・・・寝過ごしましたか・・・?」
「そうでもないけど・・・」
今日は早めに出て来いといったので、多少寝過ごしても平気な時間帯だ。
それより、瑞江は他の事が気になっているようだった。
「・・・何?」
「あ、はい。あの、さっきみたいな大きい声だしては他の人に迷惑じゃ・・・」
「もうこの時間に寝てる人はいないよ。みんな食堂で朝食とってるころじゃないかな?」
一彦ははっきり!!いった。言い方が素っ気無くて瑞江は怒らせたかと思ったようだ。
すみません。と、小さくいう。
一彦も「あ・・・」と気まずそうにしてから瑞江に声をかける。
「大丈夫、君もそのうち慣れるよ。俺も最初朝結構早いと思ったし・・・
それに、昨夜寝付けなかったんじゃない?まあ、さっき寝てる人はいないって言ったけど
それは女子塔の話しで、男子塔じゃまだ一部のやつらが寝てるよ」
瑞江はその話を聞いて多少安心したのか、表情が柔らかくなった。
一彦も顔を見て少し微笑んで、時計に目を移した。
「さて、そろそろいこうか。早く行かないと残り物になるからな、食堂はこっちだ」
「はい」
食堂について食事を頼む。
いくつかの日替わりメニューリストがある。
決まったメニューもあるが、日替わりメニューのほうが多い。
一彦はメニューを流し目で見て、止まらずに歩いていく。
瑞江はそのため見る暇も無く後についていく。
「・・・?もう決まったのか?」
一彦がきく。瑞江はあははは〜と苦笑いをする。
その様子を見て一彦はふぅ、とため息をつき一言。
「いっしょでいいか?」
「・・・おねがいします・・・」
瑞江が申し訳なさそうにするのを見て、頭をグシャグシャとなでる。
「瑞江、ここで待ってな。ついでにもってくるから」
一彦は空いている席に瑞江を座らせる。素早く食事を頼みに行く。
瑞江は落ち着かない様子で少し食堂を見渡してみる。
そして―――気付いた。
自分にそそがれる視線。
なんだろう、そう思った瞬間、後ろにいた人が声をかけてきた。
「ねえ、貴女って一彦くんの後輩なの?」
「え?・・・あ、はい」
周囲から小さいざわめきが聞こえる。
ますますわからない。
「いいなぁ〜。一彦くん可愛いもんねぇ♪うらやましいなぁ」
(・・・そういうこと・・・。あの顔だし・・・人気が無い方が変よね?)
瑞江が聞こえた声をもとに素早く判断した。
しかし、ははは、と苦笑いする事しかできない。
瑞江は内心、(早く帰ってきて!!)と願うばかりである。
「ねえ、貴女。一彦君の秘密とかあれば高値で買うわよ〜♪」
「あ!ずる〜い!!私も私も!!」
「私も買うわ!貴女、名前は?」
うひゃぁ・・・と冷や汗をかく瑞江。
引きつった笑いを消さず、自分の名前を名乗る。
「花森、瑞江です」
シーン・・・
「?」
そこで今まではしゃいでいた人たちが黙る。
急に食事のほうに集中し始めた。
「っまたせ。・・・どうした?」
「え、あ・・・その・・・」
瑞江は戸惑って目を泳がせる。
一彦は何があったのか見当がつかなかったが、食堂の雰囲気を感じ取って、それ以上は追求しなかった。
「・・・ま、とりあえず食べようか。君には教えることがたくさんあるし」
「はい!」
一彦がとったのは今日の日替わりメニューの一番上にあったやつである。
パンとスープにサラダ。それからデザートにゼリー。
意外と軽めで、瑞江は意外に思った。
・・・のは甘かった。
軽いには軽い。・・・だが、その量だ。
瑞江は薄いパンが2枚。なのに、一彦はおよそ丸まる一個分。
隅の方はきってあり、自分の分になっていることに気付いた。
スープも瑞江の1.5倍の量。
サラダもにたようなものだ。だが、ゼリーがない。
聞くと、甘いものは好きじゃない。と、典型的な男性の意見が聞けた。
「凄い量・・・食べるんですね・・・」
「・・・まぁ、ね。昔から食べる量が多いんだ。・・・胃袋が極端に大きいらしい」
一彦はそう言いながら黙々と食べつづける。
瑞江も続いてスープを飲む。
(・・・・・おいしい・・・!)
あっさりでもなく、くどくもなく。
クリ―ミーな感じは引っかからず、すっきりとしたのどごし。
具がほとんどないコーンスープなのだが・・・。
瑞江はスープだけをひたすら飲んだ。
「うまいだろ?」
「・・・・あ・・・////」
スープはもうほとんどない。
一彦から声がかからなければ、ほかの物を食べていない事に気付かなかっただろう。
瑞江は恥ずかしそうにパンをかじった。
「!」
「パンもうまいだろ?俺も最初来た時驚いたよ。小さかったのにこれ以上の量は食べてたかな」
一彦はサラダを口に運ぶ。
サクッと野菜の繊維が割れる音がする。
しっかりとした野菜は口の中でも変わらないようで、いい音が聞こえてくる。
「このサラダはドレッシングがうまいんだけど、野菜も新鮮でお互いを引き立てあってる」
瑞江もサラダを食べる。
たしかに、ドレッシングが美味しい。
が、本当に野菜も美味しい。
一彦は「な?」と瑞江を見て、食べるのを再開する。
「食べ過ぎちゃった・・・」
瑞江が苦しそうに口を抑える。
その様子を見て一彦が微かに笑う。
資料室で机にすわり、2〜4冊の本を広げてレポート用紙に書いていく。
瑞江は隣に座って書いていくものを見ていたが、何がなにやらわからない。
それに広げられている分厚い本。
他にもまだ積まれた本が5〜6冊。
一彦はその本を迷わず広げ、ページをめくっていく。
なぜこんな所にいるのかというと、食べ過ぎた瑞江のためである。
食べた後すぐの運動は良くない。しかも食べ過ぎ。
そのことからここにいる。
今調べている事は瑞江が来る前から少しづつ調べていた事。
“リング”についてのことだ。
自分の事はもちろん、もっと応用することや、
『“リング”の力を捨てることができないか。』
ということだ。
今まで調べてきた中で結論は出ない。
ただ、力が消えた“リング”の話は見つけた。
そうすれば“リング”に産まれた事を悔やむ者もいなくなる。
瑞江のように力を使いたくない者なら消せばいい。
・・・だが、そういった書物はここにあるとは考えにくい。
でも、ここの書物を最初に当たるというのは当然の事である。
「瑞江」
「・・・・・・・・え?あ、はい?」
頬を机に押し付けてぼーとしていた瑞江だが、急に名前を呼ばれて起き上がる。
返事が遅かったのを気にせず、一彦は今書き終わった物を瑞江に読むよう指示をした。
その指示通り、瑞江は紙に視線を落とす。
『“リング”とは全ての人間に備わった超・能力の事である。
その能力は個々様々で、人の数ほど“リング”はある。
―――“リング”を特殊能力を持つ者として呼ぶ者もいるが、それは違う。
全ての人が“リング”を持っているのだから。
“リング”とはつまり、各々のもつ能力を一つにまとめた呼び方なのだ。』
「一彦さん・・・これ・・・」
「続き、読んでみろ。」
『・・・何故“リング”に覚醒する者と、そうでない者がいるか。
その疑問は至極当然の事である。私の研究ではそのことが明確には明らかになっていないが、
一つの出口に辿り着いた。
“リング”に目覚める者は、全て≪自分を持っていない。≫』
「・・・・自分を持ってない・・・・?」
瑞江は納得のいかない顔で一彦をみる。
かかれていることはそこで終わりなのだ。
「・・・わからない。・・・・この本、途中で燃えたのかページがないんだ」
一彦が少し前まで広げていた本を差し出す。
たしかに、不自然な厚さになっている。
広げてみると後ろの方のページがない。こげた部分が辛うじてついているだけである。
「・・・妙だろう?俺たちには名前があって、体があって、ココ存在している。心もある。
自分の意見を貫き通す意思だって・・・。なのに、≪自分を持っていない≫んだ・・・
この本、気になってずっと読んでるんだが・・・答えが出ない」
瑞江は深刻そうな一彦をみてからもう一度読み返してみる。
『リングに目覚める者は・・・・全て・・・・』
「自分が無い分・・・“リング”で補っているとでもいいたいのかな?」
「・・・その点については俺も考えた。でも、それが全てじゃない気がする」
一彦は作業を続けながら目線を逸らさず瑞江と話す。
一方瑞江は自分達に足りない物を探してみた。
・・・だが、一彦に見つからないのだ。自分に見つかるはずも無かった。
一彦の言った事をもう一度繰り返す事しか瑞江には思いつかなかった。
「名前・・・体、存在、心・・・。・・・あ、名前・・・?ねぇ、一彦さん」
「んー?」
「さっき食堂で、名前聞かれたから名乗ったんですけど・・・。それでみんな急に静かになっちゃったん
ですよ。どうしてですか?」
一彦はゆっくりと瑞江をみる。
手を止めて体を伸ばしてから、口を開く。
「『花森瑞江』ってなのったろ?」
「え、はい。普通に・・・」
「・・・じゃあ、問題です。ここは元々どんな施設でしょう?」
瑞江は出題の意図があまりわかっていないようだ。
首をかしげて最初に出てきた言葉を口にする。
「どんな・・・って・・・“リング”の人たちの・・・いわば孤児院ですよね?」
「そう、正解。・・・だから、ここにいるほとんどの人は苗字がないんだよ」
「!」
「ほとんどの“リング”は物心つかないころから目覚める。俺や君の例の方が少ないんだ。
子供はこの施設の前に捨ててある事が多いんだ。大抵名前の入ったカードとかがあるんだけど、フルネームでって言うのはない。
だから、この施設の8割以上が苗字をもたない。人数多いし、いちいち考えて入られない。
ここにいる人たちにとって・・・苗字は憧れと同時にあてつけでしかないんだ」
ガタンッ
一彦は本を閉じると本棚に戻しに行く。
今日はもうこれで終わりらしい。
瑞江は急に自分のした事に罪悪感を感じ、そのまま悲しそうに顔を伏せた。
『君だろ?一彦の後輩』
『あ、はい。花森瑞江と申します』
『俺は光久。一応奴の友人だ』
「!!」
はじめて光久と出会ったときの事を思い出した。
そう、彼も自分の事名前しか名乗らなかった。
瑞江はそんなことにも気付かなかった自分が急に情けなくなってきた。
「あんまり気にするなよ。他の人だって中途半端に気にされても困ると思うしさ」
一彦が戻ってきていた。
瑞江の心を読んだかのように、適切な言葉を口にしている。
「でも・・・光久さんに・・・」
「光久?・・・・・・あぁ、あいつもそうだったか。
・・・でも、あいつなら全然気にしなくてもいいと思う」
さらり、と答える一彦。
「そう言う問題じゃ・・・」
「いいんだよ」
(あいつも、多分わかってると思うし)
一彦は時計を見ると立ち上がる。
瑞江に声を掛けて外に出る。
「じゃあ、まず任務について説明しようか。それから制御の練習に入ろう」
「はい!」
元気よく頷く瑞江。
一彦はその様子を見て、よし、といって体勢を整えた。
昨日と同じ部屋、二人は向き合うようにして座っている。
「まず、任務についてだけど光久に聞いた通り・・・暗殺だ
暗殺と言うからには目立たないように相手を殺る。
誰にもばれないように。
まぁ、俺の場合そう言う意味では都合が良かった」
「どうしてですか?」
瑞江が首をかしげながら一彦に問う。
一彦は苦笑いをしながら“リング”を開放する。
「?」
「これは俺の能力の一つ、千里眼」
瞳の雰囲気が一変している。
一彦の瞳の色は一定じゃないが、この能力を発動させている時だけは色が一色に定まる。
ちなみに千里眼のときは金に近い色をしている。
「千里眼はその名前のとおり遠くまで見ることができる。・・・・・・そうだな・・・」
一彦はそういうと窓のほうに目を向けた。
暫く何も無い所を見つめるような仕草をしていたかと思ったら、いきなり話し出した。
「向こうのほうで三人の子供が遊んでる。女の子と、男の子が2人」
「え?」
瑞江が席を立って窓の外を見る。
・・・が、子供らしき影は全く見えない。
と、いうかこの施設も人里はなれたところにあるので窓から見える景色に人などうつらない。
「普通じゃ見えない距離だよ。・・・まあ、正解がどうか確かめる術はないけど、信じるかどうかは
瑞江次第だよ」
「・・・望遠鏡とかで見ればいいのでは?」
「いや、望遠鏡じゃ見えないよ。遠すぎる。・・・まあ、この能力は仕事に関してはあまり活躍する事はないね」
瑞江はふえぇ・・・と、窓の外を凝視した。
「ほら、座って。次の説明するから」
「はーい」
瑞江は小走りで椅子に座る。
一彦は座ったのを確認すると瞳を閉じて一息つくとゆっくりと目を開けた。
「!!」
一彦の銀色の瞳を見た瑞江はその場に固まった。
(な、なんで!?体が動かない・・・。こわい・・・!息が・・・苦しい)
フッ
「あ、あ・・・」
一彦がリングを切ると瑞江が呼吸を整えている。
「ごめん、ビックリしたか?これは眼力。さっきの瑞江みたいに相手の動きを止めて
恐怖に慄かせることができるんだ」
「そ、そうなんですか・・・」
(何もいきなりやらなくても・・・)
瑞江は内心突っ込みを入れたが、口には出さないでおいた。
が、顔に出ていたらしく、一彦が申し訳なさそうに笑っていた。
「・・・さて、次だけど・・・。・・・ああ、これは大丈夫」
瑞江が露骨に嫌そうな顔をしていたので一彦が弁解する。
「・・・次は透視。これは説明しなくても分かるよね?」
「あ、はい。壁とかの向こう側を見ることが出来るんですよね?・・・・あ・・・」
「そう、これはもう君の前で一回つかった。・・・いやぁ、これはいろいろな時に便利だねぇ・・・」
瑞江は一彦の瞳が三月を見つけたときと同じ、薄い赤銅色だと言う事に気付いた。
一彦は毎回気配を感じるたびにこの能力をつかっている。
そのためいつも逃げ切れることが出来ている。
「一彦さんの瞳って、いつもはいろいろな色なのに“リング”をつかうと金、銀、銅の三色に固定
されるんですね〜」
瑞江が不思議そうに瞳を覗きこむ。
のぞかれた一彦は恥ずかしそうに顔を逸らす。
「そ、それよりッ!いよいよ制御の練習に入るぞ」
「はぁい」
瑞江は楽しそうに微笑む。その顔は最初の目的さえ忘れているようにも見える。
一彦はふぅ、と一回意味のないため息をついて、話す姿勢になる。
「いいか、自分のリングを操るコツは、一にも二にも心を強くもつことだ。
リングは精神に多くの負担を掛ける。ましてや制御も出来ない状態だ。
物にするかどうかは、君の心の強さにかかってるんだ。・・・・わかった?」
「はい。」
瑞江は力強く頷く。
一彦もその様子を見て、少しだけ微笑む。
「じゃあ、目を閉じて。自分の心をイメージして・・・・・・」
「心のイメージ?」
「あぁ、深く考えなくていい。・・・ただ目を閉じて、ゆっくり・・・。力を抜いて・・・・・・
眠る時の感じだ。深く、深く、目の前の闇に見を委ねて・・・・そう。
息を止めない。深呼吸をしながらだ。・・・・だんだん、だんだん・・・見えてくる」
瑞江の体に力がなくなってきた。眠そうに頭が規則的に揺れている。
催眠術にかかったように思ってくれればわかりやすいかもしれないが、
これは自分自身を催眠術にかけているようなものなので、厳密に言うと少し違う。
が、面倒なので説明は省きます。
自分の心の中に落ちていっている。自分を見詰めているのだ。
俗に言う、『夢』。
(ここは・・・!!
リヤース!リヤース村!!
どうして・・・?)
『瑞江、瑞江・・・どこだい?瑞江・・・』
『あ、パパ!!』
(!?)
振り返るとそこには小さな自分と、優しそうな若い男、父の姿があった。
(おとう・・・さん)
『瑞江、あまり遠くにいっては駄目だといっただろう?』
『みずえダイジョウブだもん!ひとりでなんでもできるもん』
リヤースから少し離れた所にある川辺・・・
無邪気に笑う自分。
そうか、と微笑む父。
(これは・・・親子で行った最後のピクニック・・・)
“そう・・・あなたはここで、≪私≫に目覚めた・・・”
(!・・・誰!?)
瑞江は声のするほうに叫んだ。
最初は何も無かった所に段々と影が出てくる。
妖しく嗤う女性。漆黒の長い髪をなびかせて、瑞江に近づいてくる。
“ようこそ。ここはあなたの心の世界。自分の心を覗く事はリングにのみ与えられた特権よ”
ふふ、と体を曲げて笑う。・・・が、それは表向きだけ。
目は少しも笑っていない。
(あなた・・・だれ?)
瑞江はもう一度同じ質問を繰り返す。
女性の笑みは一瞬にして消え去り、目を細めて瑞江を見る。
“せっかちねぇ・・・。もう少しゆっくりお話しようとは思わないの?それに、名前は自分から名乗るのが礼儀だわ”
そうでしょう?と、女性
(・・・私は花森瑞江・・・)
“知ってるわ。だって、それは≪私≫の名前ですもの”
(え?)
“≪私≫はあなたのことなら何でも知ってるの。≪私≫は≪あなた≫だから。
でもあなたは私を知らない。ずっとそばにいるのに、私に目を向けてくれないわ。
今だって、あなたは何を見ているの?あなたの胸の音、ここまで聞こえているわよ。
ああ!そうか。忘れるはずが無いわよね!!あなたはここで最愛の父をその手で殺したんだもの!
・・・・フフフフフ・・・・・・あーははははははは!!!”
(・・・!・・・まさか、あなたは・・・!!)
『パパぁ!!』
(・・・っ!?)
瑞江は声のしたほうに目を向ける。
小さい自分に、纏わりついた無数のリング。
崩れ落ちる父。その手、その足が徐々に砂のように消えていく。
わたしは、わけがわからなくて父に触る。でも、そこがまたボロボロと崩れ落ちる。
『パパ!パパ!?』
『瑞江・・・どうして・・・・・・それは、リング・・・』
苦痛に歪む父の顔。その瞳にはもう光が宿っていない。
(・・・ぉとぅさん・・・)
“そう、あなたの最初の獲物!!あなたはこの世でただ一人の肉親を殺したわ!!
楽しかったでしょう。人間が崩れ、死んでいく様は!どうだった?憎しみに歪む、優しい父の顔は!
あなたは、あのやさしい父を疎ましく思っていたのよ。そうでなければ、≪私≫には目覚めない”
(やめて!もうやめて!!)
“・・・・あなたはそうして、また顔を背ける。目を背けるなと、あの優しい先輩に教わったでしょう?
ああ、でも、こんな実の父を平気で殺すあなたを知ったら彼はどう思うかしら?
軽蔑し、あなたを突き放すでしょうね!可哀想な≪瑞江≫私がずっとそばにいてあげるわ・・・”
(・・・ずっと、傍に・・・?)
“ええ、もう疲れたでしょう?ゆっくりと心を休めて・・・)
(もう・・・疲れたわ・・・・”
(おやすみなさい・・・≪瑞江≫)
パシィンッ
「っ!?」
突然、瑞江の体から大きな音が出る。
尋常ではない様子に一彦が身構える。
ふらふらと立ち上がる瑞江の体。・・・その目に、あの優しさは消えている。
「おはようございます、一彦さん」
「力に食われたのか・・・・・・瑞江!!」
〜あとがき〜
やっと上がりましたよ。2をあげたのいつでしたっけ?
まぁ、いいや。
読んでて思うんだけど、展開早いね。
個人的にはもっとゆっくりすすめたいんだけど、話が先走っちゃって、そうもいきません。
今回は後半が結構ノリノリ(笑)でかけました。
前半はちょっと嫌ね。
それにしても瑞ちゃん、食われちゃったね。
むしろ取り込まれたって感じです。
これから先どうしようか、みたいな?
相変わらず話し考えてません。
でもまぁ、なるようになるでしょ。この話結構お気に入りなんで。
全何話になるでしょう・・・。10話以内にまとめたい。
では、次回も読んでくださると嬉しい限りです。
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