第3章 〜騎士の誇り〜
一行は、ソルフレイムとガイアロード王都の間に位置する、グロード火山を越えていた。
「わーん、もう歩けないよ〜」
早くも音を上げているのはコレットだ。
「嫌なら帰れよ、勝手について来たんだし」
「クラインさん、いくらなんでもそんな言い方は……」
冷たく言い放つクラインを、レフィがたしなめる。
「ほらコレットちゃん、私の分の水も飲んでいいから……」
「本当!?ありがとう!」
「……おいおいレフィ、ちょっとコレットに甘いんじゃないか?」
「今更追い返すのも可哀相でしょう?」
「まあ、それはそうだけどさ……」
ちょっとは自分の分も残しといた方がいいぜ、と言おうとしたが、やめておいた。おそらく、効果はないだろう。
その時、一行の目の前に、大きな洞窟が姿を現した。
「ラッキー!あそこで休もうよ!」
駆け出すコレットを、クラインが止める。
「待てよ。……見ろ、先客だ」
洞窟の中には、動き回る影があった。大量の魔物と……一人の人間。銅の鎧を着ているところを見ると、どうやらガイアロード王国の騎士のようだ。魔物にやられたものであろう、傷を負っている。
「まさか、魔物におそわれてるんじゃ……!」
「……あっ、おい、レフィ!コレットまで!」
二人はあっという間に洞窟に入っていった。
「……はあ、お人好しと好奇心も、ほどほどにしてもらいたいな……」
溜め息をつきながら、クラインも二人の後を追った。
「二十九、……三十!」
銅の鎧を着た若い男は、両刃の大剣を振るい、魔物を倒し続けていた。時々返り血を浴び、傷を負うが、それにも気付かぬ様子であった。
そのとき、どこからか、魔力を感じた。反応する間も無く、男の身体には回復魔術が降り注ぎ、周囲の魔物は炎に打ち倒される。
「大丈夫でしたか!?」
「とりあえず、襲ってきた魔物は、全部倒したよ!」
「……へ……?」
男は、気の抜けた声を出した。
「あははは、それは御心配をかけた様で……」
事情を聞かされて、男は思わず笑ってしまった。
ガイアロードの騎士は、大柄な男であった。褐色の髪は短く、バンダナで軽くまとめられていた。瞳の色は鳶色で、どうやら典型的ガイアロード人のようだ。
「まったくだよ、騎士のおじちゃん、魔物に囲まれてるんだもん!」
「おいおい、おじちゃんはないだろ?僕はこう見えても、君と十歳くらいしか違わないんだから……」
怒って頬を膨らませるコレットには、剣技で知られるガイアロードの騎士も、たじたじであった。
「ところであんた、こんな所で何してたんだ?」
「……特訓です」
クラインに問われて、騎士は急に表情を変えた。憂いと厳しさの混じった表情だ。
「僕は見ての通り、下っ端の騎士なんです。……ガイアロードの男の子は、小さい頃から何度も言われる言葉があります。……ガイアロードの騎士、それも王様に認められるような、立派な騎士になりなさいと……。僕も、そのために頑張ったのです。……それなのに……」
「……どんなに努力しても、階級が上がらないと?」
「僕はなぜ、階級を上げて貰えないのか……。いや、見当は付いています。でも、強くなれば……誰よりも強くなれば、文句はつけられないと……」
「……」
誰よりも強く。その決意がどれだけ重いものなのか、戦いを重ねた彼らにはわかる。
「……騎士様、ガイアロード王都まで、ご案内していただけませんか?そろそろ街に寄りたいと思っていたところですし……」
「いいですよ、そのくらい。そろそろ特訓にも飽きましたしね」
騎士は、剣を鞘に収め、立ち上がった。
「さあ、早いところ行きましょう。……そうそう、僕の名はジェイク。ガイアロード王国騎士団、第3部隊隊員です」
ジェイクは頼もしい戦力となった。装備のため動きはやや遅いが、その攻撃力は凄まじい。
「……あの無茶な特訓も、無駄にはなってないようだな」
「当たり前です。無駄だと気付いたなら、とっくに止めてますよ」
一行は、無事に王都へ辿り着いた。すると、なぜか通行人が、皆ジェイクの方を向く。
(おい、ジェイクだぜ)
(ジェイクって、あの、意気地無しって噂のか?)
(ああ、毎日グロード火山で特訓しているが、その前に意気地無しをどうにかした方がいいんじゃねえの?)
通行人たちは、小声で噂しているが、その言葉はあっさりと、彼らの耳に入ってしまう。
「なんで意気地無しなんだろう?」
「さあな……」
「魔物だらけの洞窟で、独りで戦っていた方よりも、そうやって小声で噂する事しかできない方の方が、よっぽど意気地無しだと思いますけどね!」
レフィが、すました顔でさらりと言う。
「お、おい、レフィ……」
「あら、そう思わないのですか?」
「……そういう訳じゃ……」
「あたし、レフィおねえちゃんに賛成!」
ジェイクの傍らの、いかにも強そうな冒険者の会話を聞き、噂しあっていた人々は、すごすごと退散した。
「……やれやれ、だな」
「あの、ジェイクさん……」
「何です?」
「もしかして、階級を上げて貰えないのは、あの『意気地無し』と関係があるのでは……?」
「……察しのいい方ですね……。事情を詳しく聞きたいのなら、食堂で食事でもして待っていてください。僕は、隊長に報告しなければならないので……」
「ああ……」
去っていくジェイクを尻目に、クラインがぽつりと言った。
「……大変なんだな、騎士って」
しばらくすると、ジェイクが食堂に現れた。食事を注文すると、まっすぐクラインたちの所へ来る。
「待たせてしまいましたか?」
「いいえ……。それより、聞かせてくれません?あの話を……」
「ええ、もちろん……」
注文した料理が置かれたのを合図に、ジェイクは話し始めた。
「……ほんの数ヶ月前のことです。僕たち騎士隊は、とある小さな村を目指していました。……ピュアウォーター諸島、レインフォール。精霊使いたちの暮らす村……。僕らが、滅ぼした村です」
賑やかな食堂。その一角――クラインたちのいるテーブルが、一瞬、凍りついたように静まりかえる。
「滅ぼした?……村を?」
「どうしてですか!?どうして王国の騎士団が、そんな事を……」
「……ほんの小さなきっかけです。上から報告された事なので、真相は知りませんが……」
「……何が、あったんですか?」
「……ある日、ヴァンダーク帝国からの使者が、王のもとを訪れました。その男は、こう伝えたそうです。……精霊使いが、ライトニアと手を組み、この国を攻撃すると……」
「ライトニアが!?ライトニアは、自ら攻め込んだりしないはずです!」
「ええ、それは皆理解しています。……しかし王は、告げられた。……この報告が偽りとしても、精霊使いが他の国と手を組めば、必ずや我が国の脅威となる。だから……、今の内に、滅ぼせと……」
「……ひどい、ひどいよ!」
「僕も、その作戦には反対です。しかし、王や騎士団長の決めた事は絶対なのです。この国の騎士である限り、逆らう事は出来ない……。そして僕たちは、レインフォールに攻め込みました。……不意打ちをした僕らは、圧勝でした。村人たちは、精霊魔術で応戦する間も無く、建物と共に炎に巻かれ、次々に死んでいきました。そうでない者も、騎士隊に斬られ、生き延びる者はいなかったのです」
「お前ら騎士隊が勝って、その村は滅んだんだな?」
「ええ。……僕は、何も出来ませんでした。村人を救う事も、殺す事も……。すると突然、茫然としている僕の前に、一人の少年が現れたのです。敵の前だというのに、その子は怯える事も、逃げる事もありませんでした。殺さなくては……。僕は、剣を振り上げました。でも……それを振り下ろす事は、出来なかったのです。少なくともこの子には、罪は無い……。僕は、その子を見逃しました。……それが、ばれてしまった。それだけなんです」
「……おじちゃんは、間違ってないよ。ただ、優しかっただけだよ……」
「……ありがとう、そう言ってくれると嬉しいよ。……でもね、この国では、王の命令に従わない事は、最大の恥なんだ。たとえそれが、正しかったとしてもね……」
その時突然、食堂のドアが開く。そこにいたのは、ジェイクと同じ銅の鎧を纏った、ガイアロードの騎士であった。
「おう、ジェイク、ここにいたか!喜べ、王様が直々に、お前の事を御呼びだぞ!」
「……喜んでいい事なのかい?」
「そうだなあ……。ま、自分の胸に訊いてみな!……おっ、連れがいたか!ま、そういう訳で、ちょっと借りてくぜ!」
少しすまなそうな顔のジェイクを連れ、騎士は行ってしまった。
「……本当に、大変そうだな……」
クラインは、心底同情しているようだった。
「……魔物が発生した、原因?」
ここは、ガイアロード城内。ジェイクは王の前にひざまずき、その言葉を聞いていた。
「そうじゃ……。お前も気付いておろうが、魔物はあの地震以来急に発生し、今では人間の数すら超えているようじゃ。そこで、おそらく剣技では五本の指に入るであろうお前に、魔物の調査と退治を行ってもらいたい。……心配するな、手掛かりが無い訳ではない。……調査隊、報告じゃ」
「はっ!」
王の言葉に、後ろに下がっていた調査隊が前に出る。
「……どうやら魔物は、伝説の塔の周囲に集まっている模様です!また、ジェイク殿が連れてきたあの三人は、炎の塔の魔物を撃破したとか……。その後、ソルフレイム周辺から、めっきり魔物が減ったとの事!従って、伝説の塔内部に、何らかの原因があると思われます!報告以上!」
調査隊は、再び下がった。
「……と、いう訳じゃ。あの三人、見た所普通の冒険者だが、塔の謎、魔物の謎を解く、重要な鍵になるだろう。……なあに、相手は冒険者じゃ。金さえ払えば、協力してくれる」
「……しかし!伝説の塔の扉は、開かないはずでしょう!?」
「……ならば、あの三人の事は、どう説明する!?万が一偶然ならば、どんな手を使ってでもいい!金はこちらで出す!何としても、魔物を撃退するのだ!……もし成功すれば、昇級も考えなくはないぞ?」
ジェイクは、王の態度に不信を感じた。しかし、断わるわけにはいかない。……これ以上王に逆らえば、騎士の名誉も奪われ、一生後ろ指を指されて過ごす事になるだろう。
「……わかりました。手は尽くします……」
ジェイクは承諾した。満足そうに頷く王に、疑惑の念を抱きながら。
「ふーん、それで、おれたちに協力しろと?」
「はい。……勝手を言ってすみません」
そこでジェイクは、急に小声になった。
「……王は、民の信頼を取り戻したいのです。……先程話したレインフォール侵略、大半は僕を『意気地無し』と見ていますが、中には僕と同じように、疑問を抱く者もいるようです。……しかし、魔物討伐を行えば、王の信頼も戻るはず。そうお考えなのです」
「……私は、構いませんよ」
そう言ったのは、レフィであった。
「確かに、王のやり方には、疑問を感じます。……でも、私たちが断われば、困るのはあなたでしょう?私は、理不尽な苦しみを受けるジェイクさんを、助けたいのです」
「あたしもいいよー!」
負けじと声を張り上げたのは、コレット。もっとも、人助けなど考えておらず、ただ依頼を受けたいだけであろう。
「……クラインさんは?」
「……うーん、まあ……、依頼主さんもこう言ってるしな!引き受けるぜ!」
「ありがとうございます!もう、何とお礼を言えばいいか……。とりあえず、今晩はゆっくり休んでください。明朝決行します」
「わかった!じゃあな!」
ジェイクは宿を出て行った。
「……でも、本当に良かったのか?」
クラインがレフィに訊ねる。
「今回も、前のようにうまくいくとは限らないだろ?」
「……それでも……」
レフィは呟く。
「それでも、ジェイクさんは、成功させなければならない。理由は何であれ、王の命に従わないものは、非難の目にさらされるのです。……ほんの少しでも可能性があるのなら、協力してあげたい。私たちは、微力かも知れないけれど、何も出来ない訳ではないでしょう?」
「……うーん、妙に難しい言い回しするなあ……。まあ、ようするに、少しは手助けになると思うから、協力したいって事だろ?」
「……あなた風に言えば、そんな感じでしょうね」
「……やれやれ……。まあいいか、とりあえず今日は早く寝て、疲れを取っておこう」
「はい」
「わかった!」
三人は、二つの寝室に分かれる。当然、男女別だ。
……明日、何が起こるのだろう。この前のような奇跡か、それとも……。
一行は、大地の塔の前に立っていた。造りは炎の塔とよく似ている。しかし、その中に潜む魔物の力は、格段に強くなっているのがわかる。
「……いよいよだな」
「……この扉を開いた時の事、覚えてます?」
ジェイクの問いに、唯一塔を開いた経験のある、コレットが答える。
「あのね、初めに、ルイとユーリ――友達なんだけど――が、二人で扉を押したの。その時はびくともしなかったんだけど、あたしが触ったら、そんなに力を入れなくても開いたの」
「うーん……。もしかして、コレットちゃんが、鍵の役割をしているとか……?ちょっと、押してみて」
「うん……」
コレットは、塔の扉に手を掛け、力を込めて押した。しかし、いくら力を込めても、扉は動かない」
「ハズレ……かな?」
ジェイクは、肩を落とす。
「待てよ、落ち込むのは早いって。コレットは力弱いし、鍵は開いても、扉が開かないかもしれないだろ?」
「……じゃあ、僕も手伝います……」
ジェイクは、扉に手を触れた。
扉は、何の抵抗もなく、あっさりと開いた。勢いでコレットが、塔の中に跳び込んでしまう。
「……コレットちゃんの言う通りだ。……手が触れただけで、扉が開いた……」
「ジェイクさんの『鍵』説、正しかったんじゃないですか?炎の塔ではコレットちゃん、大地の塔ではジェイクさんが鍵なのでしょう」
レフィの言葉に、クラインが驚きの表情を見せる。
「……どういう事だよ、じゃあおれの傍には、伝説を破った奴が、二人もいるっていうのか?」
「……炎の守護神の言葉、覚えてます?あの時の言葉、裏を返せば、『先に進めばわかる』という意味のはず……。だとすると、これからも……」
「おーい、二人とも、何してるのー?早いとこ、進もうよー!」
話し込む二人に向かって、コレットが声を上げる。彼女の言う通り、今は塔の調査が先であろう。
「おう、今行くぜー!」
「少し待っていてくださいねー!」
二人は駆け出した。
この先に進めば、きっと、何かがわかる。
「……予想通り、強敵揃いだな!」
「……確かに、洞窟の魔物とは、比べ物になりません!」
クラインとジェイクは、荒い息を吐きながら、会話していた。彼らだけではない。レフィもコレットも、強敵相手に苦戦し、疲労を溜めていた。
「この分では、塔の頂上の魔物も、かなりの強敵のはず……」
「えーっ!?もっと強いの〜?」
「そうみたいだな……。どうやら、お待ちかねのようだぜ!」
そこにいたのは、岩石でできた巨人であった。塔の天井はかなり高いが、それでも窮屈そうに見える。
「……おまえらか、この塔を荒らしまわっている小ネズミは……」
「その通り……」
「待ってください!」
魔物に答えようとしたクラインを、ジェイクが止める。
「……ここは、僕独りでやらせてください!」
「なんだって!?」
「あいては強敵ですよ!?」
「いくらおじちゃんでも、独りじゃ勝てっこないよ!」
「……わかっています。でも……、もしあいつと戦って、勝つ事が出来たら……、心の迷いを消し去る事が出来るかもしれない、そんな気がするんです!」
止めようとする三人に、ジェイクは力強く、言い放った。
「ったく……。責任はとらないぜ!」
「危なくなったら、無理しないで呼んでくださいよ!」
「……おじちゃん、がんばって!」
「……ありがとう……」
ジェイクはほんの少し笑みを浮かべ、魔物に向き直る。
「魔物よ、私ジェイクは、お前に一騎討ちを申し込む!」
「くく……おもしろい事を考える人間だな……。せいぜい楽しませてくれよ!」
魔物は岩石の腕を大きく振るう。ジェイクは剣を抜き、その腕を切り落とす。しかし、魔物の身体を離れてなお、腕の動きは止まらなかった。
「残念だが、切り落としたくらいでは止まらんよ。その岩は、まだなお俺の身体の一部……。こうして動かす事もできる!」
「な……っ!?」
岩石は天井まで浮き上がり、そのまま落下する。ジェイクは間一髪で避けたものの、あれに当たれば一溜まりもない。
「どうだ?降参したくなっただろう?」
魔物は残った腕を振るう。
「くっ……。まだまだぁ!」
ジェイクは再び腕を切り落とす。
「まだわからんか、斬れば斬るほど不利になる事が!」
「ぐあっ!」
数を増した岩石が、ジェイクの左側から襲い掛かる。今度は避けきれない。
ジェイクの左腕が嫌な音を立てた。激痛が走る。
「ジェイクさん!」
もどかしい。自分の力なら、すぐに治せるのに……。見守る者たちには、祈る事しか出来ない。
「ほら、もう剣は握れまい……。俺相手に、接近戦で一騎討ちとは……。無謀だったと諦めるんだな!」
ジェイクはそれでも立ち向かった。近づく魔物の足を、片手で剣を振るって斬る。
「なに、剣を片手で振るだと!?……しかし、また性懲りもなく攻撃するか!貴様、次で終わりだ!!」
「終わるのは……お前の方だ!」
「な、なに!?が、岩石が……操作できん!」
岩石は次々と、魔物の頭上に集まる。
「気付かなかったようだな……。僕は、剣で切りながら、お前の身体に力を注ぎ込んだ!岩石はもう、僕の意のままだ!!」
「そ、そんな事が……。人間ごときが、呪文も唱えず、そんなことが出来るというのか!?ぐ、ぐわああぁぁ!!」
岩石は雪崩のように、魔物に降り注ぐ。魔物の身体は砕け、そして……、赤く、丸い岩が、最後に残った。
「これが……、お前の『命』だな……」
ジェイクは剣を振り上げた。
もう、迷いは消えた。
僕は……。
剣は、魔物の核を切り裂いた。
「ジェイクさん!」
レフィはジェイクに駆け寄り、回復魔術を使った。傷は、あっという間に癒える。
「まったく、無茶ばかりしないでくださいよ……」
「そうだよ、見ててハラハラしたんだからな……」
「でも……、おじちゃんの事、ちょっと見直したよ」
「……だったら、その呼び方、やめてくれないかな……」
「はいはい、わかったよ、ジェイクおにいちゃん!」
一行は、勝利の喜びを、それぞれにかみしめた。
その時、突如、金色の光が広がる。
「これってまさか、炎の塔と同じ……!?」
「そういえば、ジェイクおにいちゃん、さっき呪文を唱えずに……」
光が集まり、一つの形を作り出す。それは、巨人の姿。
「よく辿り着いたな、我が子よ……」
「我が子……?」
「そう、そなたも、守護神の力を持つ者……。そなたらの思っている通り、塔を開く『鍵』でもある……」
「なぜ僕たちが、『鍵』を持っているのですか?」
「『鍵』となるだけの素質を持っているからだ……。今も立派に、その役目を果たした」
「じゃあ、僕たちは、このために……?」
「案ずるな、『力』をどう使うかは、そなたらが決めればよいのだ。願わくば、その『鍵』が、そなたらの道を開く『鍵』とならん事を……」
巨人は、消えた。
一つの答えと、新たな疑問を、後に残して……。
「ふう……。まあ、無事に終わって良かったな!」
一行は、塔を下りた。魔物が減っていたため、行きほど苦労はしなかった。
「じゃあ、戻りましょう、ガイアロードへ!」
「いえ……。僕はもう、あそこには戻りません」
『え……!?』
三人は、同時に声をだす。
「……みなさん、これからどこに向かうのですか?」
「私たちは……、ライトニアを通って、ヴァンダーク帝国へ……」
「なら、僕も、ついて行きます。……レインフォールのために、何が出来るのか……。それを、確かめたい」
「そんな……。いいのか、昇級のチャンスを棒に振って……」
「いいんです、金とか、名誉とか、そういうものが、なんだかくだらないものに思えたのです……」
「ジェイクおにいちゃん、また悪口言われちゃうよ?」
「そうですね、おそらくあの街に、居場所はないでしょう。……だからもう、ガイアロード王には仕えません。新たな主は、もう決めましたから……」
ジェイクは、剣を天に掲げ、それからひざまずく。
「クライン殿、レフィアス殿、コレット殿!私ジェイクは、あなた方を、命を賭けてお守りする事を、この剣に賭けて誓います!」
ジェイクは頭を上げ、微笑んだ。
「あーあ、なんかもったいないよな……」
「……僕は、満足してますよ。これで、いいんです」
「……でも、良かった。ジェイクさんがいれば、心強いですし……」
「これからは四人で力合わせて、がんばろうね!」
コレットの一言に、みんなが頷く。
――名誉も、誇りも、失ってしまったけれど、何一つ後悔していない。
本当に誇れるものは何か、その答えに、一歩近づけたような気がしたから――
〜後書き〜
第3章を読んでくださったみなさん、本当に感謝です。作者自身は苦しみながら書いた第3章、お楽しみいただけたでしょうか。
今思うと、コレットもジェイクも、ありがちで地味なキャラクターになってしまいましたね。というか、キャラクターの位置付けが、直前にやった、とあるゲームと似ているのは気のせい!?
と、まあ、そんな話は置いといて、とにかく次回も頑張りますので、応援よろしく!
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